制限なし

【タウンリポート】タイ南部ココナッツの不都合な真実

《ASIAN TOWN REPORT vol.3》

アジアの街角を現地の生活者の視点でウォッチしてみるアジアン・タウン・リポート。私たち日本人がまだまだ知らない現地ならではの常識や流行、社会や経済・文化にまつわる話題を気ままに報告してもらいます。今回は、タイ・サムイ島からお届けします。 
 

 

 

タイ各地でココヤシ・キラーの害虫がアウトブレイク 

南国タイを象徴するココナッツ。数年前からココナッツオイルの人気も世界で急上昇していますね。特にビーチサイドで眺めるココヤシのグリーンリーフは、リラックスしたリゾート気分をぐっと高めてくれるもの。…と思っていたら、何か変。ココヤシの葉が緑じゃなくて白い。幹も妙に細くひょろっとしていて、もしかして病気じゃないの?

「ココナッツ・アイランド」として人気のサムイ島や隣のパンガン島のリピーターなら、このココヤシの変化に気づいた方もいるかもしれません。原因は病気ではなく、キムネクロナガハムシ(Brontispa longissima)という甲虫のハムシの仕業。2010年頃からタイ南部で、アウトブレイクというレベルで猛威を振るい始めました。 

キムネクロナガハムシの成虫は、胸がオレンジや赤色で、頭部と腹部は黒く、10mmほどの細長い形状をしています。成虫・幼虫ともにココヤシの若い新葉を猛烈な勢いで食べていきます。餌食となったココヤシの木の葉の色は白く変色し、幹はどんどん細くなって枯死にいたることも。繁殖スピードがはやく、次々に近隣のココヤシへとテリトリーを広げる、まさにココヤシ・キラーの害虫なのです。 
インドネシア諸島の原産とされるキムネクロナガハムシは、タイ、ベトナム、フィリピンといった東南アジア諸国のココナッツファームに、数度に渡り壊滅的な被害をもたらしています。この悪魔のハムシは、他国から輸入された観賞用のココヤシによって広がっていったものと推測されていて、日本の沖縄県の島々にも生息しています。 
 

 

ココヤシへの殺虫剤注入に踏み切った地域も 

キムネクロナガハムシの被害はタイ全土の29県に広がっており、ココナッツ生産量は激減しています。ついにはタイはココナッツの輸入国に転落、1個あたりの市場価格も急騰しています。 

2017年に入るとサムイ島やパンガン島のあるスラタニ県では、12メートル以上の高さのココヤシを対象に、木の幹にドリルで穴を開けて殺虫剤を注入する駆除対策を始めました。処理の終わった樹幹にはオレンジ色のラベルを巻いて薬剤注入の日付を記入、経過観察を行っています。 
ココヤシへの殺虫剤使用には、ヘルシーなココナッツのイメージを毀損させる恐れもあり、健康被害を危惧する有識者からの反対もあったようですが、アウトブレイクを食い止めるための苦渋の決断だったと思われます。 

キムネクロナガハムシの駆除については、国際連合食糧農業機関(FAO)も注目して研究を続けています。殺虫剤という環境上望ましくないケミカルな対策ではなく、キムネクロナガハムシの幼虫に寄生して育つ寄生蜂などを使った、天敵による生物学的アプローチを提唱しています。実際にベトナムとモルディブでは、寄生蜂を使った駆除を実行して一定の成果をおさめたようです。 

 

 

ココナッツウォーター、ココナッツミルクは安全?  

樹高12メートル以上という制限は、残存性のある殺虫剤がココナッツの実に達しないように配慮したものと言われていますが、ココヤシのトップの新葉に薬剤が届かなければハムシは絶滅しません。対策をした生育中のココナッツの実に、殺虫剤が含まれないとは言い切れないということです。 

フレッシュな実をカットしてストローを差し込んで飲むココナッツウォーターは、タイの街中でポピュラーな存在ですが、ハムシのアウトブレイクが収束するまでは、妊婦の方や小さいお子さんは摂取しないほうが良いかもしれません。 

「無農薬」をうたっている、タイ産やハムシ被害にあっている生産国のココナッツオイルについても、殺虫剤成分が未検出でない限り、安全性には疑問が残ります。2016年のBangkok Post紙のレポートでは、オーガニック認証を受けたタイの農産物の25%近くから殺虫剤成分が検出されたとのことです。 

 


 

意外と知られていないココナッツの落下事故 

最後に、タイのビーチリゾートを訪れる日本の旅行者の方へアドバイスを。ココヤシの木の下にスクーターやバイクを停めるのはやめましょう。そして運転中はヘルメットを着用することをお忘れなく。交通事故対策はもちろんですが、強風の時にココナッツが突然落下してくることがあるからです。 

わたしがお世話になっているタイ人ファミリーの従姉妹の方は、10代の終わりにココナッツが頭部に落下して亡くなっています。ローカルのタイ人は風の強い日にはココヤシの頭上を気にして通り、スクーターも用心して停めていますからね。 

 
 
執筆者ダミー画像
nanchatic
タイ南部スラタニ在住。現地の大工さんといっしょに作った家に住んでいます。好物は William Onyeabor 。facebook.com/cafeRyzm にグッときた音楽をアップしてます。できたらくだらないことばっかり考えて絵本を描いて暮らしていきたい。猫にはモテます。 
公開日: 2018年09月01日 00:00