制限なし

【タウンリポート】競争激化!上海の公立小学校事情

ASIAN TOWN REPORT vol.2

アジアの街角を現地の生活者の視点でウォッチしてみるアジアン・タウン・リポート。私たち日本人がまだまだ知らない現地ならではの常識や流行、社会や経済・文化にまつわる話題を気ままに報告してもらいます。今回は、中国・上海の街角からお届けします。
 

人気の小学校周辺は家賃高騰!中国現地の小学校事情 

子供に高いレベルの教育を受けさせたい、というのは国を問わず親であれば共通の願いですが、中国の場合は公立の小中学校でも教育レベルの格差が存在しています。熾烈を極める上海市での公立学校入学をめぐる事情について見ていきましょう。 
 

公立校にもレベルがある?  

日本の場合、私立の学校で小中一貫の名門校や名門大学への高い進学率を誇る進学校が存在しますが、公立校に限って言えば教育は文科省の方針に沿って行われ、どの公立校でも原則的に同じ水準の教育が受けられることになっています。 しかし、中国の場合は重点学校教育という政策があり、公立学校であっても教育の水準に歴然とした差が存在しているのです。 

重点学校とは高い指導力のある教師が在籍し、教育レベルが高い、設備が充実、環境が優れている等の基準を満たした公立学校を指し、そこに入学して高いレベルの教育を受けることが将来の成功に不可欠な条件と考えられています。 

学校側も重点学校としての基準を満たすために優秀な指導能力のある教師を積極的に招き入れ、その結果としてさらに教育レベルが向上するという循環が生まれ、公立校間の格差は年々開いているのが現状です。 

 
 
 

重点学校のある学区は不動産価格が高騰   

こうなるとレベルの高い教育が受けられる重点学校に子供を通わせたい、ということになるのですが、重点学校はあくまでも公立校のため希望したからといって入学できるわけではなく、日本の公立校と同じく学区制によってどの学校に通うかが決定されます。 

つまり、戸籍簿に登録されている居住地を元にした学区内に重点校があれば自動的に重点学校が入学する小学校となりますが、重点学校の学区内に持ち家がなければ希望したからといって重点学校に通うことができないわけです。 

では学区内に引っ越しをすれば、という考えが浮かびますが、賃貸物件では居住地として認められないため、マンション等を購入する必要が出てくるのです。 

日本でもニュースを賑わせた上海の不動産バブルはまだ収束してない中、子供をどうしても重点学校に入れたい家庭は今住んでいる持ち家を売却して重点学校の学区内にあるマンションの1室を購入したりします。この結果、たとえ築年数がかなり経過していてお世辞にもきれいとは言い難い部屋でも重点学校付近の不動産価格は異常な水準まで高騰しているというのが現状です。 

このように重点学校の学区に居住しているという条件を満たすためには金銭的に高いハードルを越えなくてはならないわけですが、重点学校の中には3年以上居住の実績を必要とする等の条件を別途設けているところが多く、重点学校への入学を検討している家庭では幼稚園に入学した段階で学区内の不動産を購入しなくてはならない等、場合によっては子供が生まれた段階で計画をスタートさせる必要があるといレベルなのです

 

 
 

通学は車で送り迎えが多いのはなぜ? 

日本と同じく学区制で通学する学校が決まる上海ですが、建前上学区内に居住しているにも関わらず、重点学校周辺は通学時間帯に我が子を送る自家用車で大渋滞が発生します。 

これは書類上では重点学校の学区内に居住していることにするためにマンション等の不動産を購入したものの、居住するには狭すぎる、衛生面で難がある等の理由で実際には重点学校の学区外に居住している場合が多いためで、送り迎えの自家用車のほとんどはメルセデス、BMW、アウディ、ポルシェ等の高級車。重点学校に入学するためには経済的な余裕が必要とされていることを浮き彫りにしていると言えるでしょう。 

 
 

重点学校に入ってほっと一息?むしろそこからが始まり 

重点学校に入学することによって大学卒業まで続く過酷な学歴社会の第一歩を理想的な形で踏み出した、と安心するのも束の間、実は入学してからが真の戦いの始まりです。 

日本の小学校では他人との比較ではなく個人の頑張りや努力を軸とした絶対評価を行う中、ほとんどの場面で生徒同士を競わせる相対評価を行う中国ではレベルの高い教育は激しい競争を意味しています。 

子供達に課せられる大量の宿題は親達の手伝いを前提としているものも少なくないため、子供達だけでなく親達への負担としてずっしりとその両肩に載せられているのです。かくいう筆者も子供の宿題に苦しむ一人として日々頭を悩ませている次第です。 

 
執筆者ダミー画像
渡邉良平
1971年生まれ。2009年から上海在住。日系企業や現地企業での就業経験や生活等を扱ったコラムや文章を執筆するライターとして活躍。現在は横浜国立大学大学院に在籍し、MBA取得に向け勉強中。外食産業の国際化をテーマとした論 文を執筆中。
公開日: 2018年08月01日 00:01