もう老人なんて言わせない!
アクティブ&パワフルなアジアの高齢者たち
人生100年時代と言われる現代、平均寿命の延長は日本だけでなく、世界的な傾向だ。2023年の世界保健機関(WHO)の統計によると、男女の平均寿命の世界1位は日本(84.3歳)。アジアでは他に、3位に韓国(83.3歳)、4位にシンガポール(83.2歳)、9位にイスラエル(82.6歳)と、長寿国が多い。寿命が長くなにつれ、介護や医療の問題がクローズアップされるが、歳を重ねても生き生きと暮らす高齢者もいる。今回はそんなアクティブでパワフルなおばあちゃん、おじいちゃんを、ドキュメンタリー映画の中からピックアップ。わがまま全開の高齢者たちの生き方は、きっと私たちの未来の指針となるはずだ。
アクティブ&パワフルなアジアの高齢者たち
人生100年時代と言われる現代、平均寿命の延長は日本だけでなく、世界的な傾向だ。2023年の世界保健機関(WHO)の統計によると、男女の平均寿命の世界1位は日本(84.3歳)。アジアでは他に、3位に韓国(83.3歳)、4位にシンガポール(83.2歳)、9位にイスラエル(82.6歳)と、長寿国が多い。寿命が長くなにつれ、介護や医療の問題がクローズアップされるが、歳を重ねても生き生きと暮らす高齢者もいる。今回はそんなアクティブでパワフルなおばあちゃん、おじいちゃんを、ドキュメンタリー映画の中からピックアップ。わがまま全開の高齢者たちの生き方は、きっと私たちの未来の指針となるはずだ。
スラム街で自由気ままに生きる、世話焼きおばあちゃん(天国の庭)
まずは中国・重慶市の“映えスポット”十八梯で宿屋を営むフーさんの登場だ。街中の廃品を回収して帰っては、庭や家に飾り付ける。その奇想天外なアレンジは、もはやアートと言ってもいい。ちょっとパスポートを持って、重慶まで見に行きたくなるレベルだ。フーさんは世話焼きで、お人好しで、常にポジティブ。物を盗られても、お金を盗られても、食べる物がなくても、息子が無職になっても、前を向いて生きるだけ。どんな境遇でも「私は幸せ」と言い切れる強さを持っている。そして、自分より貧しい人や辛い境遇の人は放っておけない。スクリーンを通しても、その強さと優しさが伝わってくる。いやホント、「その人はだめでしょう」と見ているこっちが突っ込みたくなるような人にまでお金を貸したり物をあげたりなのだ。結果は想像したとおりなのだが、フーさんはまったく気にしない。奉仕の精神に溢れすぎている母を見て、さすがのネガティブ息子もやる気を見せるレベル。楽をして暮らそうなんてこれっぽっちも考えていない、頑固なくらいに働き者のおばあちゃんに、心からエールを送りたい。

70キロの荷物を背負ってヒマラヤを歩く(ネパール 雲の向こう側 Part2)
次に紹介するのは、ヒマラヤの山で荷運びをなりわいにするチェワンさん。日本で言うところの「歩荷」のような職業だ。まず、この重労働を77歳になっても続けていることが信じられない。移動は全て徒歩なので、当たり前だが車の方が早いし大量に物を運べる。しかしヒマラヤの道は、我々が想像するような道路ではない。「いや、もうこれ登山道でしょ? 車は通れないでしょ?」と言いたくなるレベルの「悪路を超えた悪路」なのだ。当然、車では四輪駆動でも進めない場所がある。人やラバしか通れない幅の道もある。そして4000メートルを超える標高。そう、富士山よりも高いのだ。仲間などいない孤独な道のり。一人でヒマラヤの細道をひたすら登って下って、目的地まで荷物を運ぶ。恐れるものは落石と倒木と体の痛みの3つだけだと胸を張る。撮影時は70キロの荷物を背負って歩いていたチェワンさん。若い頃は95キロを運んでいたという。老いてなお元気、いや全く老いていない様子のチェワンさんを見ていると、人間の可能性は無限で、年齢を理由に何かを諦めてはいけないと感じるばかりだ。いやはや、恐れ入りました!


憎らしいほどの強権ぶり! これぞ典型的なオヤジ像(パパ・アラエフの音楽王国)
最後は、ミュージシャンであり楽団のリーダーを務めるパワフルなおじいちゃん……いや、おじいちゃんと呼ぶには忍びないほどの“ボス顔”が印象的なアラエフさん。映画の冒頭からいきなり高圧的! 隣に座る息子が気の毒に思えるほどの“圧”が体中からあふれている。タジキスタンでは「国の宝」と称されるほど絶大な人気を誇る楽団を束ねるのだから、これぐらいでちょうどいい。そう、楽団のリーダーとしての資質はじゅうぶんなのだ。だがアラエフ楽団は実の家族で構成されている。そこで問題になるのが“おじいちゃん”としての顔、そして後継者の育て方だ。だがそんな冷静な見方をしているのは、家族と我々視聴者だけ。ご本人のアラエフ様は、常に「ワシがリーダー」なのだ。全て自分の思い通りにしないと気が済まない。今、あなたの頭にも浮かんだことだろう。ご近所のあのおじいちゃんと一緒なのだ。考えてみてほしい。「ワシがリーダー」おじいちゃんが、口だけでなく技量もナンバーワンだったとしたら……。あなたには説得する自信があるだろうか。年齢とともに性格が丸くなるとか、第一線を退くとか、そんなこととは100%無縁のアラエフさん。願わくは、このままずっと“古いタイプのオヤジ像”を保っていてほしいと思ってしまう。ああ、アラエフさんに叱られたい!

日本では「孫に好かれたい」と、優しくて物分かりのいいおじいちゃん、おばあちゃんが多い。だが、まだまだ続く残りの人生を楽しむためには、もう少し自己主張してもいいのかもしれない。高齢者を見守る人たちも、「もう若くないのだから」などと決めつけず、一緒になって楽しめる心の余裕を持ちたい。めざせ、生涯現役!
作品紹介 Vol.01 アクティブ&パワフルなアジアの高齢者たち
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