中国の憂鬱全3本

固定化する貧富の格差

中国は改革解放で市場経済を導入して以来、深刻な格差社会を生んできました。富む者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなるという構造です。不動産バブルにより、投資で財を成した人々が、新たな富裕層として社会に台頭し、それらが勝ち組として羨望を集める一方、当然ながら投資で財を失う人々や、都市開発によって住居を追われる人々という天国と地獄の様相を見せはじめます。中国特有の都市と農村を区別する戸籍制度の問題がからみ、それらの深刻な格差は固定化されていきます。

変容していく家族

同時に、社会の基盤であるはずの家族の形も変容してきました。「留守児童」と呼ばれる問題は、農村部から都市部への出稼ぎにより、両親不在の家庭が激増し、貧困が親子の絆を奪うという現象を巻き起こしています。それは家庭の崩壊を意味し、子どもの発達にも深刻な影響を及ぼしているという専門家の分析もあります。また、貧困は子どもたちから教育の機会を奪います。「放学」と呼ばれ、親が教育の意義を理解せず、幼い子どもでさえ働き手として家業を手伝わせる貧困家庭の現実は、教育格差を生み出し、貧しい人々から豊かな未来を永続的に奪っていくのです。かつては、大家族をはじめ住民コミュニティによって人々が相互に支え合いながら生活を営んできた中国社会は、過酷な競争原理がもたらされ、個が重視されることにより、孤立していく人々が増えました。自己を優先する価値観は、離婚を助長したとも言われます。結納金が高騰し、財産がなければ結婚もままならないという問題も顕著化しました。男女の愛情にまで、市場経済の原理がもたらされ、拝金主義が横行しています。

「愛」を見失う社会

中国の社会において、人々の心の豊かさが置き去りにされているように思えてなりません。それは特有の国家制度の問題なのか、国民性の問題なのか、考えなければなりません。こうした社会の負の側面を客観視することによって、日本が直面する問題を見つめ直すことにもつながります。人間に勇気や希望、安らぎを与え、支えてきたものは、様々な「愛」であったはずです。そこには「絆」という言葉も含まれます。小さな「愛」を自らの中で大切に育むことで、社会で見失いかけている大切なものを取り戻す機会につながっていくのではないでしょうか。

特集「中国の憂鬱」では、「愛」を見失いつつある社会で、懸命に生きる人々の生きざまにクローズアップした3作品をお届けします。
 
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