チベット 消滅の危機全3本

「チベット動乱」から60年を経て

チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世が亡命するきっかけとなった「チベット動乱」(1959年)から昨年で60年が経ちました。中国政府は、チベットの経済的な発展や繁栄をアピールする一方で、チベット人に対する監視や統制を強化し、チベットの人々の反発や不満を抑え込んできました。また習近平指導部は、ダライ・ラマ14世を敵視し、中国からの独立を狙う「分裂主義者」と決めつけ、チベット亡命政府との対話も拒み続けています。

民族弾圧は血の殺戮から文化抹殺へ

中国政府がチベット統治に自信を深めている背景には、チベット地域の経済的な成功があります。ハイテク企業を誘致するなどして中国国内でトップの経済成長を維持しているからです。チベット自治区トップの呉英傑・党委員会書記は、「チベット人民は党がもたらした幸せな生活にとても感謝している」と、全国人民代表大会で述べています。しかしながら、宗教活動の制限、チベット語教育への介入、厳しい言論統制など、中国による政治的、文化的弾圧は年々深刻化しています。習近平指導部は「宗教の中国化」を掲げており、中国政府の民族政策によって、チベット仏教を柱とするチベット文化の尊厳が踏みにじられていることは明らかです。現在は、徹底した統制の強化により、民族弾圧は、かつてのような“血の殺戮”から、“文化抹殺”の段階へと変貌しているのです。

中国の若者に広がる少数民族に対する無理解と非情

近年、中国の若い世代では、チベット、ウイグルをはじめとする、いわゆる少数民族に対する無理解、非情が広まっているといわれています。中国政府が推し進める漢族との同化政策が教育にも及び、さらに流入する娯楽が増えたことから、祖先から伝わる歌や踊り、言葉に至るまで、若者が独自の民族文化を学ぶ機会や意欲が失われてしまったといいます。中国政府は、少数民族の優秀な若者たちを試験で選別し、率先して彼らに中国共産党主導のエリート教育を受けさせることで、民族独立の芽を刈り取る政策をとっています。その最前線がチベットだといえます。

風前の灯火である伝統文化の継承のなかで

もはや伝統文化の継承が風前の灯火という厳しい状況の中で、それでもチベット文化を守り抜こうとする人々が存在しているのもまた現実です。止まらない中国による“文化的虐殺”に耐え忍びながら、いかにチベットの伝統文化を継承するのか。チベットが消滅の危機に瀕している状況で、いま私たちに何ができるのかが問われています。

 
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