シリアを忘れない全3本

泥沼化する紛争 シリア内戦は終わっていない

日本では、すでにシリア内戦は終わったと誤解をする人もいるぐらい、シリアに関する報道は見かけなくなりました。しかし現状は、アサド政権がシリア国内のほとんどを制圧したものの、ロシアやアメリカをはじめ周辺諸国がそれぞれの思惑を持って紛争への関与を強めており、出口の見えない泥沼化の状態が続いています。宗教的、政治的な思惑が絡み合い、情勢により紛争の構図も変化してきたシリア内戦は、シリアを舞台にそれぞれ別の思惑で自らの権益を拡大・死守しようとする周辺諸国の「代理戦争」と化し、今なお混乱を極めています。

三つ巴の戦いが混乱に拍車アフリカは〝中国の夢〟実現の最前線

21世紀最大の人道危機とも言われているシリアの内戦は、アサド政権に弾圧されていたスンニ派の人々が「アラブの春」に呼応し、独裁政権の民主化を訴える市民運動を起こしたことが始まりでした。最初は民主化を求めるデモ運動が、それを鎮圧する政府軍と武装蜂起した反政府軍の戦いに発展し、自由シリア軍を結成したことで、紛争は決定的なものとなりました。自由シリア軍はやがて内部でも意見がわかれて分裂し、反体制派が周辺国からも入り乱れて過激派にとって代わられることで双方の対立が激化。アサド政権政府軍、反体制派、さらにIS(イスラム国)という三つ巴の戦いが混乱に拍車をかけたのです。

SNSなどを駆使した情報戦

またシリア内戦は、メディアを駆使した情報戦も特徴のひとつです。SNSが反体制派の大きな力になったのです。西側メディアは、SNSで現地情勢を世界へ発信する反体制派と連携し、市民の被害者、犠牲者、特に子どもや女性たちの姿をセンセーショナルに報道することで、「巨悪・アサド政権に対する自由を求める民衆の蜂起」という構図を打ち出そうとしました。しかし、欧米が支援する反体制派では、民主化とは正反対であるイスラム原理主義の過激派勢力が力を持ち、次第にその矛盾が露呈していくことになります。

シリア情勢に無関心な日本

内戦は、犠牲者だけでなく多くの難民を生みました。2017年には国内避難民だけでも660万人にものぼります。国外に逃れた人々も多く、最も多く難民を受け入れているトルコでは約370万人、ウガンダで120万人やパキスタンで約140万人とされています。トルコからヨーロッパへ逃れる人もいて、今も支援を必要としている人があふれています。こうした現状について、日本人の多くは知りません。しかし、私たちは決して無関心であってはいけません。なぜならそれは、シリアが国際情勢の縮図であり、その駆け引きは必ず東アジアにも波及するからです。だからこそ、もう一度、シリアで何が起きたのかを知り、そして私たちはどうあるべきかを考える必要があるのです。

 
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