母親の権利全3本

妊娠・出産・避妊などの女性が持つ自己決定権

「リプロダクティブ・ライツ」という言葉があります。日本語では、「性と生殖に関する権利」と訳され、妊娠・出産・避妊などについて、個人、特に女性自らが決定権をもつという考えです。1994年の国際人口開発会議(ICPD)で提唱されました。つまり、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもを持つか持たないか、いつ持つか、何人持つかを決める自由を持つことを意味します。

女性の身体や生殖の機能を、女性自身の手に取り戻す

一方で、「リプロダクティブ・ライツ」には、不妊、人工授精、代理出産、死後生殖、性感染症、 HIV/エイズ、性暴力、買売春、中絶など、さまざまな問題を幅広く含んでいます。「自己決定権」を女性が持つことを、単純に「女性の欲望」としてとらえると、人工妊娠中絶をひとまとめにした「命の選別」という議論につながります。しかし、これまで国家や家族や夫によって支配されてきた女性の身体や生殖の機能を、女性自身の手に取り戻すという意義からは、女性の自立や自由、尊厳を守る権利といえます。

生殖医療の光と影 その先にある社会とは

また、近年の生殖医療の発展は、「リプロダクティブ・ライツ」を複雑にします。例えば、生殖に関する事柄を社会と切り離し、女性と胎児という二者関係だけで捉え、「理想の子どもを持ちたい」と生殖医療に依存すると、目的を達成するまで歯止めがきかなくなってしまいます。そして、生殖医療によって社会の経済格差が表面化されるのです。世界の女性が、医療を受ける側と、子宮や卵子を提供する側とに分断されていく危険性さえ考えられます。法整備が追いつかず、様々な問題を生じている現状もあります。従来のジェンダーの枠を超えた生殖の権利を考えることも求められていくでしょう。

今回の特集では、「それでも、産みたい」という母親たちに焦点をあてた3つのドキュメンタリー映画を通して、「リプロダクティブ・ライツ」について考えます。


 
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