緊迫のアフガニスタン全3本

アメリカ史上もっとも長い戦争

アフガニスタンからの米軍の撤退は、この国の政府をあっけなく崩壊させ、国際社会は大きな衝撃を受けています。20年前、アメリカによって政権を追われた反政府勢力「タリバン」が、驚くべきスピードで政権を奪還したのです。首都カブールの国際空港には国外脱出を求める大勢のアフガニスタン人が押し寄せ、離陸する輸送機にしがみついて死亡するという痛ましい事故が起きるなど、想像を絶する混乱が続いています。また、空港周辺ではテロによる多数の犠牲者も出ました。「テロとの新しい戦争」だったこの戦いは、「アメリカ史上もっとも長い戦争」と呼ばれ、戦費250兆円、命を落とした米兵は2300人以上とされ、米軍の撤退は、「世界の警察官」と呼ばれてきたアメリカの威信を深く傷つけました。

「タリバン」とは何者なのか

中央アジアと南アジアの交差点に位置する山岳地帯の多民族国家アフガニスタンは、1979年末のソ連軍侵攻から、その後の覇権争いによる内戦が続いてきました。そうした混乱の中、1994年にイスラム神学校で学ぶ学生を中心に組織されたのがイスラム原理主義グループの「タリバン」でした。彼らは1996年にアフガニスタン全土を掌握し、政権を樹立したのです。しかし2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロにより、首謀者である国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを「タリバン」政権がかくまっていたことから、アメリカがアフガニスタンを攻撃し、「タリバン」は首都カブールを追われたのです。しかし彼らは、国内外で一定の勢力を保ち、駐留するアメリカ軍や政府軍との戦いが20年にも及びました。

「タリバン」の復権による深刻な懸念

米軍の完全撤退によって懸念されることは、アフガニスタンが再び世界的な武装勢力の温床になることです。アメリカが政府軍に渡した大量の最新兵器は「タリバン」の手に渡りました。アフガニスタンで捕らえられていたアルカイダのメンバーが解放されたという情報もあります。また、これまで政府や米軍などに協力したアフガニスタン人への報復が始まるとも言われています。日本に協力した人々も例外ではありません。さらに、抑圧されてきた女性の教育や就労は認められるのか、自由や人権は守られるのかといった懸念や、中国、ロシアがアフガニスタンと関係を強めることで国際情勢が不安定になることも予想され、欧米諸国を中心に深刻な懸念が広がっています。今後、日本がどのようにアフガニスタンと向き合うのか、責任ある対応が問われることになるのです。

 
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