葬儀の事情全3本

いま問われる、現代の葬送の意味

国籍や民族、宗教を問わず、誰も逃れることができないのが死です。葬儀は、故人にとってこの世で最後の儀式。日本では地域によって葬儀の風習が異なりますが、アジアの各地域でも、それぞれの葬儀に特徴があります。死者を弔う行為は信仰と密接な関係を持ち、民族の文化や社会制度、自然条件などのさまざまな要素にも影響を受けてきました。静粛に故人を見送る厳かな式典もあれば、盛大な食事や音楽で弔うにぎやかな葬送も存在します。人類特有の生活習慣である葬儀ですが、時代の変化とともにその意義や価値が変わりつつあります。現代人の私たちに「葬送とは何なのか」を問う作品をセレクトしました。

経済成長により生まれる新たな価値観

アジアの総人口は約45億人(2018年)と世界人口の6割近くを占めています。経済の発展とともに葬儀需要が増えると期待され、中国や東南アジアを中心に葬儀サービス市場が過熱してきました。米国の調査会社によると、マレーシア、シンガポール、インドネシア、タイの葬儀関連市場は2013年の41億ドル(約5千億円)から18年には約66億ドルに拡大し、日本の葬祭業と肩を並べるほどの市場に成長。中国や台湾でも、新興勢が事業拡大をうかがっています。死に対する恐れから、葬儀業界で働くことはタブー視され敬遠される風潮がありました。インドでは火葬業がカースト最下層の職業とされています。しかし中国では、業界の成長に合わせて厚待遇な企業も台頭し、古い価値観にとらわれない若者の就労が増えています。

伝統的慣習と経済負担のジレンマ

アジアの中には、大勢の参列者を呼ぶことを葬儀の価値とする地域や国があります。中国では伝統的に、参列者の多さが故人への弔意や尊敬の念だという考え方。農村部ほどその傾向が強く、余興で集客することが習慣化しています。故人と面識がなくても、大勢の参列者を集めることが、子どもたちにとっては亡くなった親への「孝」でもあるのです。インドの農村部でも、火葬後の饗宴に集う人の数で社会的な地位が保てるという習慣が残っています。インドネシアのバリ島では火葬費用が払えない人が多く、いったん遺体を埋葬し、費用が調達できれば掘り起こして火葬にするのが一般的。貧困層にとって葬儀の経済的負担は重大な問題ですが、伝統的な慣習を断ち切ることは容易ではありません。

 

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