プーチンの帝国全3本

大国ロシアの夢と新たな価値観の形成

ウクライナへの軍事侵攻で「ロシアの正義」を訴え続けるウラジーミル・プーチン大統領。国際社会から孤立することを厭わず、自国の権益にこだわりを見せています。その背後には、ソビエト連邦崩壊後に同盟国で次々と民主化革命が起き、経済と防衛の両面で西側に取り込まれていったことが大きく影響しています。グローバリゼーションの枠組みを受け入れたものの失敗に終わった自国を立て直すため、プーチンが選んだのが権威主義による国家の安定。旧ソ連時代への回帰でした。「大国」ソ連の時代を知る世代を中心に、国民は熱狂。2015年には90%の支持率を記録しました。中国や中東とも関係を深め、西側の「普遍的価値観」とは異なる、新たな極を形成しつつあります。

ネット社会はロシアにとって諸刃の剣

ロシアはインターネットを経由した情報工作を得意としています。政府機関がネット工作部門を持ち、他国の選挙結果を左右するほどの影響力を持っています。標的となるのは米国やドイツ、フランスなどの西側諸国。英国政府の発表により、ロシア情報機関所属のハッカーが、世界規模で原発などの重要インフラにサイバー攻撃をかけていたことも明らかになりました。一方で、インターネットに慣れ親しんだ若者世代が西側の情報にアクセスするため、政府の思い通りに国民をコントロールできなくなりました。国内ではさまざまな法規制をかけ、情報統制を進めていますが、外部の情報に触れる世代の反発を抑えることが難しくなっています。

分断された国民と反体制派の排除

ロシア国民の間では、ソ連時代の「強国」「大国」を志向する世代と、自由と民主主義を標榜する世代での対立が起きています。前者の圧倒的な支持を集めるプーチンは、統制の強化と反対派への弾圧を進めてきました。ロシアは今、2人以上での反政府運動は禁じられ、デモや集会は逮捕拘束の対象です。選挙では政府の公認候補以外は立候補できず、選挙監視団体によると棄却された候補者はすでに900万人にも達しています。見せかけの民主主義と政敵の排除。国の未来に失望した若者たちが亡命しても、プーチンにとっては反体制派がいなくなることは好都合なのです。

 

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