漢方薬の秘密全4本

西洋薬とは対極にある、中国伝統の治療薬

漢方薬は、薬効のある植物や動物、鉱物などから作られた生薬を組み合わせたもの。漢方という名称は、江戸時代にオランダ医学(蘭方)に対してつけられた日本独自の呼び方で、中国では「中薬」と呼んでいます。漢方で一般に使われる生薬は200~300種類といわれ、その多くが植物に由来。科学的に合成され、単一成分で作られる西洋薬とは対極にあります。古代中国の後漢時代、西方の山地で、伝説上の薬祖神・神農の名をつけた薬物書「神農本草経」が編纂され、薬物の経験的知識が一つにまとめられました。紀元前と紀元後をまたぐ数百年の間に確立された生薬治療は、現代にいたるまで連綿と続く中国の伝統的な薬物治療法なのです。

生薬が、季節や暮らし、文化に浸透

中国は漢方薬の原料となる生薬の一大生産国。都市近郊から山間部、砂漠などさまざまな地域で採集や加工が行われています。近代設備で合理的な栽培と製造に取り組む生産者が増える中、経験に基づいた採集方法と伝統的な手順による加工技術にこだわる生産者もいます。漢方薬は中国の人々にとって単なる生業ではなく、日常生活そのもの。季節の訪れを知らせ、暮らしや文化を支える、人生の大切な一部になっているのです。「漢方大国」と呼ばれる日本の漢方薬の原料は、およそ8割にあたる2万トンが中国産ですが、これは中国全土で生産される生薬の約0.5%にすぎません。

今なお研究が続く、漢方薬の可能性

血圧を下げる、細菌を殺す、熱や痛みを取るなど、一つの症状や病気に対して強い効果を持つのが西洋薬。西洋薬のベースとなる西洋医学は、検査を重視し、その結果から治療法を考えます。検査結果や数値などにしっかり表れるような病気治療を得意としていると言えます。漢方薬は1剤に複数の有効成分が含まれているため、多様な症状に効くのが大きな特徴。漢方薬のベースとなる漢方医学は、患者の病状や体質を重視し、その結果から処方します。新しい研究によって、漢方薬によるこれまでにない適応症の解明も進んでいます。次々と市場に投入される新薬ではなく、千年以上前から使われている漢方薬も、今なお新しい使い方の研究がされているのです。

 
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