僧侶の祈り全2本

自由と解放を求めて自らの意志を貫く

チベット人の自由と解放を求めて、不屈の精神で闘った象徴的な二人のチベット僧がいます。中国当局に拘束され、想像を絶するむごい拷問を受けながらも33年間を生き抜いたパルデン・ギャツォ氏と、中国政府がチベットに侵攻する前の旧態依然としたチベット社会にあって、溢れんばかりの才能と好奇心を持ち、アーナキーな反逆児ぶりを示し続けたゲンドゥン・チャープル氏です。ふたりの僧侶は、生きた時代や環境も違いますが、それぞれの時代に真のフリーチベットを追い求め、自らの意志を貫き通した点で通じるものがあります。強靭な精神と揺ぎ無い意志の先に、どのような祈りがあったのでしょうか。

33年の獄中を生き抜きチベット独立を主張

パルデン・ギャツォ氏は、1959年の民族蜂起で、政治犯として逮捕された数千人の中の生き残った3割のうちの一人です。その後27歳から60歳までの33年間、中国当局の激しい拷問や虐待に耐え、獄中を生き抜きました。パルデン氏の意志は驚くほど強靭なものでした。「看守を恐れるような素振りを見せてはならない、恐れこそが彼らに力を与えているのだから……私が三十年の獄中生活から学んだ教訓は、決して情けを乞うてはならないということだった。得るべきは、哀れみではないのだから……」。釈放され、インドへ亡命した後も、パルデン氏の意志は揺らぐことなく、チベットの独立を世界へ訴えかけることでした。

仏教以外の世界を知らないチベットに危機感

一方、ゲンドゥン・チャープル氏は、僧侶でありながら、画家、詩人、歴史学者、地理学者、性科学者、翻訳家で、20世紀のチベットを代表する自由主義思想家、人文主義者といわれています。彼は、チベットの歴史を徹底して紐解き、また外国を旅しながら未知なるものへの飽くなき好奇心を寄せ、自らの個性を自由気ままに表現しました。しかしながら、あくまで仏教の血脈を維持することを至上命令としていた旧チベットの指導層や、外の世界からの影響を病的にまで嫌っていた僧院勢力は、仏教にとって個人はあくまで教えを次代にわたすための器にすぎず、オリジナルの思想を見出すことも、仏教以外の分野での新しい豊かな文化を生み出すことも、その価値を認めなかったのです。外の世界を知るゲンドゥン・チャープル氏は、こうしたチベットの将来に強い危機感を抱き、チベットの閉塞感を、懸命に打ち破ろうとしたのでした。

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