特集「パレスチナ蹂躙の歴史」(全19本)

◆紛争の構造的対立と「パレスチナの国家承認」を巡る国際的な分裂
パレスチナ問題を解決困難にしている大きな要因の一つが、パレスチナの国家承認への動きに対する世界のスタンスの相違です。近年、パレスチナ国家の正式承認を意図する国が増えていますが、イスラエルはこれを強く非難。さらにイスラエルは国際的な激しい反発を受けながらも、東エルサレムとマアレ・アドゥミム入植地の間を分断する、新たな入植計画を発表しました。反対派は、この計画がパレスチナ国家の希望を打ち砕くと警告しており、イギリスやドイツ、ヨルダン国王も、入植地建設は国際法に明白に違反していると批判。決定の撤回を求めています。一方、米国の一部は、入植地開発はイスラエル政府が決定すべきことであり、原則として国際法違反ではないとの見解を示しており、国際社会での足並みの乱れが見られます。
 
◆外部勢力による緊張増大と、矛盾した経済的依存関係
イスラエルとパレスチナ間の紛争は、外部勢力の関与によって、解決がさらに複雑化しています。イスラム教シーア派の大国イランは、レバノンのヒズボラやガザのハマスなど、米国からテロ組織に指定されている反イスラエル武装組織を支援。「抵抗の枢軸」勢力を拡大してきました。しかしイスラエルとの戦争で、ヒズボラは弱体化。指導部は崩壊し、イラン自体も力を失いつつあります。
こうした政治的対立がある一方で、被占領下のパレスチナ人とイスラエル企業の間には、生活と労働力確保という経済的な依存関係が存在。国内インフラが破壊され低賃金の仕事しかないパレスチナ人は、生活のために検問や国境を越えてイスラエルで不法労働者として潜入し、イスラエル企業は安価な労働力を確保したいという構造的な格差が、密航・密入国を後押ししています。
 
◆情報の検閲や批判の封殺による、分断の固定化
平和への道は、情報の統制と相互理解を阻む社会的な分断によって妨げられています。イスラエル軍は1982年にPLO公文書館から押収したパレスチナの貴重な歴史映像の公開を拒否し続け、歴史認識の形成においても情報をコントロールしています。イスラエル占領に批判的な立場を取る若いユダヤ人を追ったドキュメンタリー映画『イスラエル主義』は、「反ユダヤ主義」の非難を浴び、大学運営者や外部団体からの組織的なキャンペーン(数万通のメール攻撃など)により、上映が直前で中止または延期される事態が繰り返し発生していますこうした批判的議論の抑圧が、相互理解の機会を奪うと同時に、国際社会に対して「見せるための映像」や「100%どちらかに偏った映像」といった無意識のバイアスをかけ、分断を固定化させています。

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