特集「最下層で生きる」(全5本)

◆アフリカと南アジアで突出している貧困層人口
世界銀行が設定している「世界貧困ライン」によると、「貧困層」とは1日1.9ドル未満で暮らす人々のこと。その数は世界全体で7億人以上と推計されています。また貧困層を定義する指数として、国連開発計画が示す「多次元貧困指数」があり、こちらは教育や健康、生活水準から、人々がどの程度貧困状態にあるかを示すもので、世界で11億人が多次元貧困に該当。割合が最も高いのは、サハラ以南のアフリカと南アジアで、全体の84.5%がこれら2地域に存在しています。貧困の多くは政治的・歴史的要因や、紛争、災害によるものですが、近年は気候変動や経済格差も要因としてクローズアップされています。
 
◆植民地支配や伝統的社会制度がもたらした“負の遺産”
アジア諸国の多くは、欧州の植民地支配を受けたことで資源を収奪されたり不平等な貿易を強いられたりと、経済的な自立が困難な状況に陥りました。宗主国が求める作物を大量に栽培したことで産業構造に偏りが生じ、他の産業発展は停滞。利益の大半は宗主国のものであり、植民地となった国の国民に恩恵はありませんでした。また植民地時代に医療や教育へのアクセスが制限されていたことも、貧困層を生み出す結果となったのです。これらの不平等や不利益は、植民地支配から独立した後も負の遺産として残りました。植民地支配の他にも、伝統的な身分制度が残る地域では、階級の差による収奪や不平等が根強く残っています。
 
◆気候変動のいちばんの被害者は貧困層
貧困層が生まれる要因として、気候変動も見逃せません。水害によって住む場所を失ったり、猛暑や干ばつによって農地や家畜を失ったりといった人々が都市部に移り住み、スラムで暮らしているのです。国連の調査によると、2010年からの10年間で気象関連の災害により故郷を離れた人は年平均で2310万人。その多くが貧困に陥るリスクを抱えています。
また、健康への影響も懸念されています。熱中症や感染症の増加、栄養不良など、気候変動は人々の健康に悪影響を及ぼしています。中でも住環境が劣悪で医療アクセスも容易ではない貧困層は健康状態が悪化しやすく、経済格差による歪みが見られます。
 

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