特集「子どもの視点」(全9本)

◆世界の混迷は、子どもたちにも困難をもたらす
私たちが生きる今は、とても困難な時代です。紛争や貧困、差別、分断、気候変動などさまざまな問題が起き、世界は混迷の度合いを深めています。その困難は、子どもたちの日常にも及んでいるでしょう。虐待、体罰、いじめ、性暴力、連れ去りなど、子どもの被害は後を絶ちません。未来を担う子どもの今を大切にし、安心して健やかに成長できる社会をつくることは、大人の責務です。すべての子どもが、自身を大切な存在だと実感できる社会をつくるために、国連は1989年に「子どもの権利条約」を採択し、現在190以上の国と地域が批准しました。条約には「差別の禁止」「子どもの最善の利益」「生命・生存・発達の権利」「意見の尊重」の基本原則がありますが、制度整備が遅れている国では、条約の理念と現実の間にギャップが存在しています。
 
◆紛争地域や貧困地域の子どもたちを脅かす暴力と喪失
子どもの権利は、制度が整っていても実生活で侵害されることがあります。特に紛争地域や社会制度が脆弱な環境の地域では、深刻な問題が発生しています。アフガニスタン、シリア、イエメンなどの紛争地域では、子どもが兵士として徴用されたり、爆撃や地雷によって命を落としたりするケースが後を絶ちません。ユニセフによると、2005年から2020年の間に、26万件以上の重大な権利侵害が確認されています。また中東や南アジアでは、児童婚が依然として広く行われているという報告があります。女児の健康や教育の権利を奪う児童婚は、貧困や宗教的慣習、教育機会の欠如が背景にあります。条約だけでは、子どもの権利の侵害は止まらないのです。
 
◆無戸籍の子どもたちが直面する“見えない壁”
教育や医療のアクセスは、子どもの発達に欠かせません。しかし、日本を含む一部の国では、無戸籍の子どもが社会制度から排除されるケースがあります。出生届が出されていないことを理由に、教育や医療、就労などの基本的な権利が保障されないまま成長する子どもが存在するのです。彼らは行政サービスの対象外となり、社会的に孤立を深める傾向があります。戸籍の有無に関わらず、貧困や紛争、社会的差別などにより、これらの権利が十分に保障されていない地域もあります。また、子どもの意見を尊重する文化が根付いていない場合、「意見の尊重」の基本原則が蔑ろにされることもあります。子どもの権利を守るためには、制度だけでなく社会全体の意識と行動が必要なのです。

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