特集「モンゴルで生きる」(全4本)

◆自然の声に従い生きることが、環境との共存
私たちの祖先は、自然を尊重し、環境と共存してきました。モンゴル人も同様に、自然と調和した暮らしを実践しています。しかし世界各地で天然資源の使用が増大し、環境バランスは崩壊寸前。 モンゴルでは砂漠化が進み、土地の4割以上が使用できなくなりました。すでに森林面積の4分の1が破壊され、地球温暖化により大旱魃が発生。数千万頭の家畜が死に、国の経済に大きな損害を与えました。モンゴル人の多くは、このような危機的状況を自然界からの警告と受け止め、精霊からのメッセージに従うことで難局を乗り切ろうとしています。彼らが頼るのは呪術師である“シャーマン”。伝統的な精神文化を重んじることで、自然との共存を図ってきたのです。
 
◆馬は遊牧民の誇りであり友である
モンゴルの家畜頭数は約7000万頭。ヤギと羊で6000万頭を超え、馬は400万頭ほどです。頭数こそ少ないものの、馬はモンゴル人にとっての“誇り”。また家畜の中で唯一、夜でも移動できる動物です。馬は、移動手段だけでなく、共に暮らし、敵を追い払い、最後は命をもって食料となる、貴重な“友”であり“宝”。モンゴル人は昔から馬の繁殖には人一倍気を配り、良い血統の種馬を残すことに腐心してきました。種馬以外のオスは去勢し、より良い血統だけを残してきたのです。種馬は繁殖だけでなく、リーダーとして群を統率し、ときに天敵から群を守る存在。中でも白い種馬は至高の馬とされ、慶事でも大切な役割を与えられています。
 
◆経済自由化の波に抗えない、労働者と遊牧民の暮らし
1924年、ソビエト連邦に次ぐ2番目の社会主義国となったモンゴル人民共和国。80年代に入り東欧の民主化が進むと、その波はモンゴルにも押し寄せ、90年に大統領制に移行。92年に新憲法が施行されて民主化への道を踏み出しました。かつての国営企業は解散し、生活が立ち行かなくなった労働者の多くは仕事を求めて首都ウランバートルに流入。現地に残って低賃金の鉱山労働に就き、細々と暮らす人たちもいます。また、気候変動がもたらす家畜の大量死により、やむなく都市部に移り住む遊牧民も増加。生態系の破壊とともに民族文化の消失も危惧されています。

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