特集「ワールドカップの陰で」(全1本)

◆中継ボイコットも起きる「非人道的」な大会
サッカーのワールドカップ・カタール大会が2022年11月20日に開幕します。中東で初の開催となる同大会ですが、欧州では、大会施設の建設に携わった外国人労働者らへの非人道的な扱いなどを背景に、抗議活動が広がっています。批判の的となっているのが、スタジアムをはじめとする大会関連施設の建設現場で指摘されてきた過酷な労働環境。欧米のメディアや人権団体によると、建設現場で死亡した出稼ぎ労働者は6000人にも上ります。また、カタールがLGBTQ(性的少数者)に不寛容であることにも各国が反発。欧州各都市でパブリックビューイングの中止を決めるなど、“試合中継のボイコット”が起きています。石油マネーに物を言わせて大会を招致したカタールの、開催国としての真価が問われています。
 
◆熱狂と悲劇 サポーターの愛が暴走するとき
2022年10月1日にインドネシアのサッカースタジアムで起きた暴動は、131人の死者を出す大惨事になりました。事件の発端は、負けたチームの熱狂的ファンが試合後にピッチに乱入したこと。その後、警察官が発射した催涙ガスがパニックを生み、観客が出口に殺到したことで悲劇が起きました。1964年にはペルーで300人以上、1985年にはベルギーで39人、2012年にはエジプトで74人が死亡するなど、サッカー界ではサポーターの暴動による事故が繰り返されてきました。一方で、サッカー以外のスポーツでファンが暴徒化するという事例は多くありません、人々はなぜサッカーに熱狂するのか、魔力に取り憑かれたサポーターたちの実情に迫りました。
 
◆試合操作を目論む「闇の勢力」たち
2018年にベルギー1部リーグのクラブで、大規模な詐欺・八百長疑惑の捜査が行われ、欧州サッカー界に激震が走りました。同年には欧州チャンピオンズリーグで5点差がついたパリ・サンジェルマン―レッドスター・ベオグラード戦でフランス当局が八百長捜査に入りました。欧州サッカー連盟(UEFA)は、全体の約1%の試合に八百長の疑いがあると公表しています。一方アジアは、サッカー界で「アジア人が八百長問題の悪の権化」と言われるほど。背景には大規模な賭博シンジケートの存在が指摘されています。試合結果をコントロールすることで、不当な利益を得ようとする勢力の排除が課題となっています。

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