特集「インドらしい生き方」(全4本)

◆連綿と続くインド文化を支える宗教
インドは、あらゆるものを飲み込んでしまうようなエネルギーにあふれた国。その文化や暮らしを形作っているのが宗教的価値観です。紀元前5世紀ごろに始まったヒンドゥー教は、インド国民の約8割が信仰。カースト制度をはじめとした社会秩序や菜食指向の食文化、寺院を中心とした建築様式など、さまざまな生活文化に浸透しています。インド憲法では否定されているものの、カーストは今も残り、司祭者、王族、庶民、隷民の4つの階層をベースに、2000以上のカーストが存在すると言われています。異なるカースト同士の交流がない一方で、カースト内の団結は強く、職業や交際、結婚などに厳格な規制が存在しています。ヒンドゥー教以外でも、インドの人々は信仰に厚いことで知られています。
 
◆広がる格差と貧困層
インドの人口は、およそ13億9000万人。そのうち1億7,000万人以上は、1日約200円以下の生活を送る「貧困層」だと言われています。その割合は、実に世界の貧困層の4分の1。原因として挙げられる「格差社会」です。インドは地域によって格差が大きく、1人あたりの所得水準が低い北部・東部・北東部で貧困率が高いのが特徴です。IT分野で成長を見せるインドですが、主産業は、サービス業(53%)と鉱工業(31%)、農林水産業(15%)。新型コロナウィルスの影響はサービス業で大きく、貧困層には厳しい状況です。人々が宗教に救いを求める理由のひとつは、厳しい生活環境にあるともいえます。
 
◆自己を見つめ、神や自然と調和する
宗教はインドの人々にとって生活習慣の一部です。個人の思考や行動はもちろん、家族との関係や地域、社会との関わり方など、あらゆる事象に宗教的価値観が根付いています。それは作法や儀礼などの様式にとどまらず、人生をより良く生きるためのヒントでもあるのです。神々への信仰とともに、自己の内面も磨こうとするのがインド人の宗教観。瞑想や内観を重視し、人と自然との調和を求める思考は、数千年の時を経ても色あせることがありません。

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