制限なし

【タウンリポート】トライリンガルなマレーシア人

《ASIAN TOWN REPORT vol.4》

アジアの街角を現地の生活者の視点でウォッチしてみるアジアン・タウン・リポート。私たち日本人がまだまだ知らない現地ならではの常識や流行、社会や経済・文化にまつわる話題を気ままに報告してもらいます。今回は、マレーシアの言語事情についてご紹介します。 
 

看板は多言語表示 

マレーシアはとてもおもしろい国です。マレー系約67%、中国系約25%、インド系約7%で構成されており、フィリピン、インドネシア、ネパール、ミャンマー、バングラデシュなど海外からの労働者も多く受け入れているので、人種のるつぼと呼ばれるにふさわしい多民族国家です。こんなにいろんな背景の人がいるのに、どうやって共に生活していくのだろうと不思議に思いますが、マレーシア人の言語能力の高さがそれを可能にしているんだなとつくづく痛感させられます。 

マレーシア人は(もちろん全員ではないですが)母語、マレー語、英語の最低3ヶ国語は話すと言われています。母語にあたるのは、中国系なら、北京語・広東語・客家など、インド系なら、タミル語・イバン語・ドゥスン語・カダザン語など、出身地によって違います。マレー語は公用語とされており、全員子どもの頃から学校で教えられます。学校や職場ではいろんな背景の人と接することになるので、1つの言語だけでは生き残れないわけです。シチュエーションによって使う言語を変えているようです。町の看板が数カ国語で表示されているのはめずらしいことではありません。 
 


こんなことがありました。ローカルの友だちと英語で話している時に、1人がふと中国語の単語を放り込むと、突然会話が全部中国語に変わってしまいました。中国語のわからない私はただぽかんとするだけで、それに気付いた友だちが、「ごめん、ごめん」と英語に戻してくれました。同じ事はマレー語でも起きます。どうやら本人たちは、今何語で会話しているのか、全く意識していないようです。もっとすごいのは、英語、中国語、マレー語でそれぞれが話してコミュニケーションが成立していることもあります。 一文の中に3言語がごちゃまぜになるのもマレーシアあるあるです。一体どんな脳をしてるんだろうとうらやましい限りです。ただ思うのは、生活するためにいろんな言語を話しても、それぞれにしっくりくる言語が1つあるんだなということです。おいしいものを食べた時、腹を立てた時にでる言語がその人の一番心地いい言語だと聞いたことがありますが、アイデンティティを確立するためには1つ揺るぎない言語が必要になるわけです。その言語は主に家庭内で使ってきた言語のようです

 
 

 

嫁姑問題 共通言語で円満に   

言語問題は結婚によって生じることがあります。例えば、友だち夫婦は中国系同士でお互い英語と北京語がペラペラなのでコミュニケーションの問題はありません。でも、育った地域が違うので親の使う言語が広東語と北京語で異なり、さらに年配の方は英語が話せないことがあるため、お嫁さんとお姑さんでコミュニケーションをとるのが難しくなったようです。共通語としてマレー語もありますが、温かい気持ちの表現や、密にコミュニケーションをとるには、やはり母語が一番なわけです。それでお嫁さんはご主人の家庭の母語を一生懸命勉強してお義母さんと良い関係を築いておられました。 

このように、耳で聞いて言語を習得するとおもしろいことが起きます。とくに中国語で起きやすいことなんですが、「話せるのに読めない!」という問題です。前に友だちにチャイニーズネームをどうやって書くのか聞くと、「漢字では書けないんだよね〜」と、アルファベットでチャイニーズネームを書いてくれたことがあります。耳で聞いて習得した言語なので、読み書きが全くできないというのは、マレーシアではめずらしいことではありません。町の看板が数カ国語表示なのはそのためでもあるのかなと思いました。話を戻しますが、その人たちが子育てをすると、子どもたちも読み書きができなくなります。そのため、子どもはあえてチャイニーズスクールに入れて中国語を身に付けさせる親もいます。 

私も触発されて、中国語を勉強しようと思い友だちに先生になってもらおうとしたことがありますが、すぐ断念しました。なぜなら、本人たちはペラペラ話すのに、文法を説明できないんです。とにかく文をまるまる覚えたらいいよ、というアドバイスだけで、ひたすら耳コピで発音練習させられました。私は言語を映像化して覚えるタイプなので、その学習の仕方が本当に苦手でした。読めないので、文法書を使って教えてもらうこともできません。チャイニーズスクール出身者を先生にするべきでした。それ以来中国語とは疎遠になりました。 

 
 

英語? マングリッシュ!  

マレーシア人は多言語を話すため、言語がお互いの影響を受けて、それぞれがマレーシア独特のものとして発展しているようです。例えば英語は、発音の仕方がかなりマレー語寄りなので、欧米の英語に慣れている人は、同じ英語には聞こえません。「マングリッシュ」と呼ばれるほど、独特の英語を話します。単語の語尾が全部短くなるので、欧米英語のように流れるような英語は話しません。欧米人の観光客が、店員の英語を何度も聞き直している光景はここではあるあるです。欧米人の友だちによると、英語に聞こえないそうです。中国語も、大陸の中国語とは発音や文法が少し違うそうです。これは私の感覚ですが、マレーシア人の話す中国語はマレー語の影響を受けてか、やさしく聞こえる気がします。文法については、詳しいことは分かりません。 

私はまだまだマレーシアの言語事情を理解できていませんが、言語が違えば思考パターンも違ってきます。彼らはいくつもの言語を操りながら、広い視野で物事を見ています。私はなんでもつい1つの型に押し込めてしまいがちなので、学べることがたくさんあります。文化と言語違いを学びながら、人に優しくなれたらいいなと思う今日この頃です。 

 

 
執筆者ダミー画像
こじままさみ 
クアラルンプール在住。 三重県出身でマレーシアに来て2年になります。日本ではあり得ないことが当たり前のこととして起きるので、初めはショックを受けてばかりでしたが、最近は多少のことなら話のネタに笑いとばせるようになってきました。マレーシアのゆるーい空気を愛情たっぷりにお伝えしたいと思います
公開日: 2018年09月01日 00:00