制限なし

【タウンリポート】愛と血のギャンブル!闘鶏の魔力

《ASIAN TOWN REPORT vol.6》

アジアの街角を現地の生活者の視点でウォッチしてみるアジアン・タウン・リポート。私たち日本人がまだまだ知らない現地ならではの常識や流行、社会や経済・文化にまつわる話題を気ままに報告してもらいます。今回は、タイの国民的ギャンブルをご紹介します。 
 

ちょっとドヤ顔で自慢のシャモを誇らしげに見せるスーさん   

 

闘争心の強い雄のシャモ 

コックファイトすなわち闘鶏は、ムアイタイ(ムエタイ)と同様にタイ人が熱狂する合法の国民的ギャンブル。タイの全国各地で月に何度か闘鶏大会が開かれ、熱い声援と札束が飛び交っています。闘う鶏が死傷することもある残酷な一面と、愛情を込めてかいがいしく世話をする飼い主の日常の姿には、正直理解しがたいギャップも感じてしまいます。 

闘鶏に使われる軍鶏(シャモ)は、雄同士が戦いを始めると、どちらかが逃亡するか死ぬまで戦いを止めないほど強い闘争心を持っています。放し飼いではすぐに争いが始まるので、ケージや網で囲って雄を1羽ずつ分離して飼育する必要があります。 

日本のシャモという呼び名は、タイの古い国名シャム(Siam)がなまったもの。日本には江戸時代初期にタイから伝わり、時代劇にも度々登場するように幕末の時期には江戸の街で軍鶏鍋屋が流行しました。 

シャモの純血種の肉質は締まって旨味がありますが、結構固いのでカレーやスープ、トムヤムなどの煮物に使われることが多く、どちらかというと焼き鳥には不向き。ブロイラーと違い鶏本来の肉の旨味があり、食用として肉質が柔らかいほかの品種と掛けあわせることも少なくありません。実際シャモに触ってみると、胸や背中、太腿の筋肉が実に隆々としていて、まさに鶏レスラーといった感じ。
 

卵を売るためのこの養鶏場では、雌鶏にふっくらとした見た目も美しい別品種を採用している


プロテクターなしのガチのファイトが行われる南タイ   

Coconuts TVが良質なタイの闘鶏のビデオレポートを作成しているので、よろしければご覧ください。 
https://www.youtube.com/watch?v=J4KF8sN8kVY 

ビデオで触れられているように、中東や東欧をルーツとする闘鶏の歴史は6000年前と非常に古く、現在でも世界各地で広く行われています。東南アジア諸国でも一般的なギャンブルで、男性を主体にタイのほかフィリピン、ベトナムでも高い人気を誇っています。 

フィリピンの闘鶏は、片足にブレードを取り付けて戦わせるスタイルで鶏の致死率が高いもの。バンコク近郊やタイ北部では、シャモの鋭い爪にプロテクターを巻いてボクシングのように戦わせるので、致命傷を負わない、よって「残酷ではない」とビデオの中で大会関係者が語っています。一方、タイ南部ではプロテクターなしのガチなファイトが一般的。当然死傷率も高いのですが、友人の闘鶏家スーさんは、「フィリピンの刃物を使った闘鶏なんて残酷すぎる!」と吐き捨てるように言って涼しい顔です。

 

基本的には飼い主以外の人間にはとても臆病。ただし顔見知りになると馴れ馴れしく寄ってくること/figcaption>


 

闘鶏家は残酷な金の亡者なのか 

シャモの飼い主は愛する鶏が闘鶏場で殺されたり傷ついたりするのは、悲しくないのでしょうか?スーさんがとても愛情を込めてシャモたちを育て、ケアしている日常を知っているだけに、割り切れない疑問が湧いてきます。 

Coconuts TVで登場する闘鶏家は、「長い歴史を持つ闘鶏はムアイタイと同じさ。選手たちは自ら望んでファイトしているだろ。シャモも闘う本能をもっている鳥。鶏が不幸だなんて決めつけることは誰にもできない。しゃべることができないからね」と、よく訳のわからないロジックを展開しています。 

大きな大会になると、数十万から数百万円という金額が一挙に手に入る闘鶏。現金収入が限られている農村や漁村では、確かに元手のかからない魅力的なビジネスと言えます。闘鶏は長い歴史を持ち、世界中で人々を惹きつける魅力があるのも事実。ヴィーガン主義者が肉食を残酷だという主張や、捕鯨を残虐と決めつける態度と同じように、簡単に白黒をつけてしまうことは危険な気がします。

スーさん宅で猫の餌を狙う若い雌鶏シャモ。奥にはいつもマイペースなアヒルくん
筋肉質な肉体美のシャモのママとキッズたち

シャモの一生 

シャモのファイターとしての寿命は、生後1年〜2年くらいで、3年経つとほぼ引退という短さ。つまり百戦錬磨のチャンピオンなど存在しないわけです。タイの闘鶏家の中には、海外の品種を輸入してシャモと掛けあわせ、より強いファイターの育成を目指す人もいるとか。そこまで行くとある意味尊敬の念すら湧いてきますが。 

料理上手なスーさんの家で、ときどき食事をごちそうになることがあります。1羽だけ放し飼いにされた雄のシャモがにじり寄ってきて、じっと食べる様子を凝視しています。睨み返しても目をそらさない目力は大したもの。「そうかおまえも1年後にはシメられる運命なのか」と思うと、ついつい食べ残しの骨や魚を放ってしまいます。しかし、ホント何でも食べるのね〜。

 

モフモフでかわいいシャモのひよこ。しかし眼光はどこか凛々しい

 

 

執筆者ダミー画像
nanchatic 
タイ南部スラタニ在住。現地の大工さんといっしょに作った家に住んでいます。好物は William Onyeabor 。facebook.com/cafeRyzm にグッときた音楽をアップしてます。できたらくだらないことばっかり考えて絵本を描いて暮らしていきたい。猫にはモテます。 
公開日: 2018年09月08日 00:00