チベット仏教の瞑想と神秘に迫る「トゥクダム 生と死の境界」ドキュメンタリー作品

 


今回のドキュメンタリー映画紹介は、「トゥクダム 生と死の境界」です。チベット仏教の高僧が瞑想中に亡くなる現象「トゥクダム」をテーマにしたドキュメンタリーで、法医学で判別できない人間にとっての「死」とは何かを考えさせられ、チベット仏教の奥深さ神秘さを感じられる作品です。それではご紹介をさせていただきます。
 

<作品紹介>

ドキュメンタリー作品タイトル:トゥクダム 生と死の境界

~悟りの境地に至るチベット仏教の死後瞑想!死生観を問う覚醒ドキュメンタリー作品~

 
原題  Tukdam: Between Worlds
制作年/作品時間  2022年製作/作品時間91分
撮影地  チベット、インド
製作国  フィンランド
監督  ドナー・コールマン(脚本・共同制作・撮影)
受賞歴
 2022年 Other Israel映画祭 オフィシャルセレクション
 2022年 第42回サンフランシスコユダヤ映画祭 オフィシャルセレクション
 2022年 DMZ国際ドキュメンタリー映画祭 オフィシャルセレクション
 2022年 イスラエルドキュメンタリー映画祭 ベストリサーチ賞ノミネート 
 
トゥクダム。それは、瞑想を極めたチベットの高僧が、瞑想中に亡くなること。遺体は死後数日から、長いときは数週間も腐ることなく、背筋を伸ばして座ったままでいる。学者や研究者たちが、トゥクダムの科学的なデータを取るべく、瞑想実践者や亡くなった瞑想者の検査を始めた。法医人類学者は「死後にバクテリア増殖によるガスが発生していない」、チベット伝統医は「心肺が停止していても、体は心臓付近を中心に温かさを保っている」と言う。神経科学者もトゥクダム中の死者は温かいと認めながらも、機器による物理的計測では何一つ確認できない。ダライラマ14世は、それを「深いレベルの微細な意識」によるものだと説く。人間にとって死とは何なのか。チベット仏教の奥深さを感じる作品だ。

[ドキュメンタリー作品・予告編]
 


本ドキュメンタリーの見どころをお伝えする前に、本作品を興味深く見ていただくために、チベット仏教や瞑想に関して簡単ではありますが、ご紹介いたします。

<チベット仏教について>

チベット仏教は、インド仏教 を伝承し、チベットを中心に発展している 「大乗仏教」の一派です。大乗仏教の 代表的な仏教経典としては、般若経 や法華経などがありますが、チベット仏教では、インド からもたらされたサンスクリット仏典をチベット語訳 に翻訳された大蔵経を用いており、サンスクリット原本がない場合などは、チベット訳を逆に翻訳に利用する程、経典の信頼性が高いとされています。
ラマと呼ばれる師僧、「化身ラマ」を尊崇しており、すべての衆生を涅槃に導き救い終わるまで、何度でもこの世に化身として生まれて来るとされているため転生ラマとも。現在のチベット仏教指導者は法王ダライ・ラマ 14世です。
チベット仏教は、チベット民族だけでなく、ネパール、ブータン、モンゴルなどで 信仰されています


瞑想に関して

「瞑想」は仏教の修行法のひとつで、精神的健康に良いとされています。厚生労働省からの情報発信でも、「瞑想とは、心と体の統合に焦点を当て、心を落ち着かせ、健康全般を増進させるために行われるさまざまな実践技法のことを指します。」とあります。瞑想は行動科学の観点から研究されており、心理学では「マインドフルネス」としても知られています。
「仏教の瞑想」は悟りを得るための修行法で、心と身体を観察することが基本となります。瞑想には、様々な種類や実践方法がありますが仏教の瞑想として、サマタ瞑想(止行)と、ヴィパッサナー瞑想(観行)があげられます。サマタ瞑想は精神集中で心を鎮め、ヴィパッサナー瞑想は洞察(智慧)で心を活気づけるという違いがあり、両方体得することが望ましいようです。

■瞑想の目的と効果

脳と心の状態をリラックスさせる。自分の内面と向き合う。さまざまな自分の感情に気付く。否定的な感情をなくす。自分自身を見つめ直し、ありのままを受け入れる。心を平穏にする。
 

<チベット仏教の死生観と死後瞑想>


■チベット仏教の死生観

仏教における死は「仏の意識」(菩提)にもっとも近づくことのできる機会であるため、死についてポジティブであり、高僧に至っては、死に臨んでは、座禅をくんで瞑想に入り、その中で「死の光明」を迎える。という死生観があります。

◇トゥクダム(tukdam)とは◇

トゥクダムはチベット仏教の僧が死期を悟ったときに瞑想修行によって行う死の準備のことです。死後瞑想は、死期を悟った高僧が、亡くなる前から瞑想修行を行い、呼吸と心臓が止まった後、瞑想の姿勢が保たれ、しかも遺骸の温もりが失われず腐敗しない状態となっている法医学でも説明しがたい神秘的な現象が起こります。
 

<ドキュメンタリー作品の考察>


「トゥクダム 生と死の境界」は、チベット仏教における宗教儀式・特異な死後現象「トゥクダム」を追ったドキュメンタリーでチベット仏教の死生観と瞑想に関する貴重な記録です。トゥクダムを経て亡くなった高僧の遺族たちへのインタビューや通常の死体が数日後にはガスが充満して大きく膨れ上がり腐敗していく様子とまったく違うトゥクダムの状態を検証実験の様子も映しています。死後も意識が残るとされる微細な意識が、どのように脳や身体と関係しているのかを医学界の瞑想の専門家や研究者たちの見解も交え、チベット仏教の精神修行の深遠さを探るドキュメンタリーです。
悟りの境地ともいえる瞑想中に死を迎えることで死後の体温保持や腐敗防止が起きる現象は、チベット仏教の秘儀として継承されてきました。法医人類学の分野でも関心を集めるトゥクダムは、生と死とは何か、その境界線はどこなのか、死の定義そのものを問い直す必要性すら感じました。
瞑想やトゥクダムがチベットの宗教的実践としてどのような意味を持つのか、チベットの高僧は死を恐れておらず、またその家族も静かに死を受け入れます。チベットの僧侶の生活や精神修行を知ることで、仏教における悟りの概念やチベットの文化と伝統への理解も深まると感じました。

<社会を生き抜く力を養うドキュメンタリー視聴のおすすめ>

 
本作品は、さまざまな人におすすめですが、仏教や瞑想に興味がある方、チベット仏教や死生観について深く考えたい方、ダライ・ラマ14世の教えを学びたい方、神秘的な宗教儀式や死の定義に関心がある方などにぜひご覧いただきたいドキュメンタリー映画です。
本作品を通じて、チベット仏教の死生観や精神世界に触れながら、自らの生と死について改めて考えるきっかけとなるはずです。瞑想と死の神秘に迫り、チベット仏教の深遠な世界を体験して見てください。



◇関連ドキュメンタリーご紹介
チベット仏教の作品では、 今回ご紹介した トゥクダム 』以外にも、チベット教宗教指導者ダライ・ラマ14世の ドキュメンタリー映画『最後のダライ・ラマ』も公開されています。こちらも是非ご覧になって下さい。

【コラム】おすすめ!必見作品「トゥクダム 生と死の境界」

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