世界最大の宗教行事・ヒンドゥー教の祭典「クンブメーラ」に迫るドキュメンタリー作品『信仰のつながり』

 


今回のドキュメンタリー映画紹介は、インド最大の宗教行事である「クンブメーラ」に焦点を当てた『信仰のつながり』ドキュメンタリー作品です。クンブメーラは、ヒンドゥー教の伝統的な巡礼行事であり、数千万人が聖なる河で沐浴を行う世界最大級の祭典です。本作では、クンブメーラの歴史や意義を深く掘り下げるとともに、サドゥー(修行者)たちや巡礼者の姿を追い、彼らの信仰を映し出します。また、クンブメーラで毎回問題となる行方不明者の捜索や行事期間中の裏側や人間模様にも迫ります。インド文化やヒンドゥー教の精神的な側面を理解するために欠かせない作品となっています。それでは作品紹介をさせていただきます。
 

<作品紹介>

ドキュメンタリー作品タイトル:信仰のつながり

~インドのヒンドゥー教行事クンブメーラ!熱狂巡礼中に死者・行方不明者が発生する世界最大級の祭典に迫る宗教ドキュメンタリー~

 
原題  Faith Connections
制作年/作品時間  2013年製作/作品時間117分
撮影地  インド
製作国  インド・フランス
監督・脚本  パン・ナリン
受賞歴
 2013年 トロント国際映画祭
 2014年 RDVユニフランス 
 
12年に一度行われるヒンドゥー教の神聖な巡礼行事「クンブメーラ」。生涯の功徳が得られるという沐浴や祈りのために1億人もの信者が集う55日間を、映像に収めた。捨て子を保護して育てるヨギ(ヨガの達人)に芽生えた、母性のような親心。家出をしてクンブメーラにたどり着きサヴァ(ヨガ修行者)と行動を共にした少年の心の変容。はぐれた息子を1週間以上探し続ける家族の心境。苦悩や歓喜、恐怖、愛情、奉仕など人の持つ感情や行動の全てが、クンブメーラの喧騒と混沌の中に飲み込まれてゆく。この世界に生きる人、この世界を捨てた人それぞれが、この地で何を見つけ、何を得るのか。ヒンドゥー教の奥深さを凝縮した世界がここにある。

[ドキュメンタリー作品・予告編]
 

本ドキュメンタリーの見どころをお伝えする前に、本作品を興味深く見ていただくために、ヒンドゥー教やクンブメーラに関して簡単ではありますが、ご紹介いたします。

<解説!ヒンドゥー教の概略と信者数、行事紹介>


■ヒンドゥー教の概略■

ヒンドゥー教は、インドを中心に広く信仰されている宗教で、紀元前1000~500年頃のヴェーダ時代にその起源があり、多神教的要素と哲学的な思想が融合した特徴を持ちます。特定の創始者や教典が一つに定まっていないのも特徴的です。
ヒンドゥー教は多神教であり、代表的な神にはブラフマー(創造神)、ヴィシュヌ(維持神)、シヴァ(破壊神)などがいます。これらの神々はそれぞれ異なる役割を持ち、信者の間で崇拝されています。また、「カルマ(業)」と「サンサーラ(輪廻)」の思想も重要で、行いによって次の生が決まるという考え方が根底にあります。

■ヒンドゥー教信者数■

ヒンドゥー教の信者数は約11億人以上とされ、世界で3番目に多い宗教です。その大多数はインドに集中しており、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、インドネシアなどにも信者がいます。近年では移民によりアメリカやヨーロッパにも広がりを見せています。インドでは人口の80%を占める8億人以上が信者とされています。



■ヒンドゥー教の行事イベント■

ヒンドゥー教には多くの宗教行事があります。ヒンドゥー教徒にとって重要なものであり、それぞれに独自の信仰や伝統があります。代表的な行事イベントをご紹介します。

クンブメーラ(Kumbh Mela)  聖なる川で沐浴を行う大規模なヒンドゥー教の巡礼行事。
ディワリ(Diwali)  光の祭典として知られ、家庭や寺院でランプが灯される。
ホーリー(Holi)  色とりどりの粉をかけ合う春の祭り。
ナヴァラートリ(Navaratri)  女神ドゥルガーを称える9日間の祭り。
ラタ・ヤートラ(Ratha Yatra)  大きな神輿を引く巡行祭。


<解説!クンブメーラの魅力と歴史>

■クンブ・メーラとは?■

クンブメーラはインドの4つの巡礼地(イラーハバード、ハリドワール、ウッジャイン、ナーシク)で3年に一度持ち回りで開催されるヒンドゥー教の祭典です。この祭典では、ガンジス川などの聖なる河での沐浴が重要な儀式とされています。ヒンドゥー教徒にとって、沐浴を行うことで過去の罪が洗い流され、解脱に近づくと信じられています。

 

■クンブメーラの歴史とその精神性■

クンブメーラの歴史は神話にさかのぼります。神々と悪魔がアムリタ(不死の霊薬)を巡って争い、神々がそれを持ち去った際に、4カ所にその雫が落ちたとされています。それが現在のクンブメーラの巡礼地となっています。クンブメーラにはヒンドゥー教の修行者であるサドゥーが多数集まり、独自の修行や祈りを捧げます。

◇クンブメーラ2025「マハー・クンブ・メーラ」大祭開催◇

12年ごとに聖地で開催されることになる「マハー・クンブ・メーラ」(偉大な)は、2001年、2013年と開催され、直近では2025年に開催されました。2025年のクンブメーラは2025年1月13日から2月26日まで、インド・ウッタルプラデーシュ州プラヤーグラージにて開催され、惑星の配置が144年に1度という巡り合わせになったことで過去最高の6億人以上の巡礼者が参加した世界最大イベントとなりました。この期間中、プラヤーグラージ市は一時的に特別行政区として指定され、広大な仮設キャンプ、道路、橋、トイレ、医療施設などが整備され、AI搭載の監視カメラやドローンを活用した群衆管理が導入され、安全対策が強化されました。​

 

<『信仰のつながり』ドキュメンタリー作品の見どころ>

本作では、ヒンドゥー教最大の行事イベントクンブメーラに集う人々の信仰や儀式の詳細を記録し、視聴者に臨場感あふれる映像で伝えています。


■壮大なスケールで描かれる信仰の姿■

本作は、世界最大級の宗教行事「クンブメーラ」の圧倒的なスケールをリアルに捉えています。数千万人もの人々が集い、同じ目的のもとに行動する様子は圧巻です。
また、クンブメーラにおける行方不明者の問題や、巡礼中に発生するさまざまな人間模様が詳細に記録されています。クンブメーラの華やかな側面だけでなく、巨大な祭典の裏側にも迫り、単なる宗教イベントとしてではなく、より深い視点からクンブメーラを理解できる作品となっています。

■クンブメーラで発生する行方不明者や死者数の実態■

 

クンブメーラは世界最大の宗教行事であり、1日で数千万人の巡礼者が一堂に会します。そのため、混雑の中で多くの人々が家族とはぐれ、行方不明になる問題が毎回発生します。過去のクンブメーラでは、数千人単位の行方不明者が報告され、現地の警察やボランティア団体が対応に追われました。中には家族と再会できないままになるケースもあります。また、巡礼中の過密な状況や過酷な環境によって、体調を崩す人も多く、熱中症や転倒事故などにより死者が出ることもあります。
2025年のマハークンブメーラでは、群衆への安全対策を講じているものの群衆の殺到により約30人が死亡、90人以上が負傷する事故が発生しました。
 

<ドキュメンタリー映画『信仰のつながり』はこんな方におすすめ!>

クンブメーラは、数年に一度の世界最大級の宗教行事です。インド、ヒンドゥー教の行事の中でも、特に重要な位置を占めています。この作品を通じて、ヒンドゥー教の信仰やインドの伝統行事について深く学ぶことができます。特に、インドの巡礼地や文化、サドゥーの修行生活など、普段あまり知ることのできないインドの側面を見ることができ、壮大な祭典の裏側で起こる問題や苦難なども知ることができるのが、本作の大きな魅力です。

インド文化やヒンドゥー教に興味がある方にとっては、クンブメーラはインドの文化や宗教の信仰を深く理解する上で欠かせない行事であり、膨大な記録で実態を知る機会となります。
世界の祭りやイベントに関心がある方にとっては、世界一といえる数億人が一同に会する集会イベントであるクンブメーラは壮大なスケール感や参加者の熱意を映像を通じて体感できます。
宗教や信仰に関するドキュメンタリーを好む方にとっても、信仰とは何か、宗教とは何かという探究のきっかけとなる貴重なドキュメンタリーです。
 
「信仰のつながり」は、クンブメーラという壮大なヒンドゥー教の祭典を通じて、インド文化や宗教行事の深い側面を探るドキュメンタリーです。本作では、信仰とは何か、巡礼とは何かを問い直し、祭典の良い面だけでなく、行方不明者や行事イベントの裏側の苦難も描かれています。世界的に見ても特異な祭典クンブメーラを通じた、信仰のつながりを視聴して実感してみませんか。世界は広いー。アジアはとっても神秘的で魅力に溢れています。



◇関連ドキュメンタリーご紹介
ヒンドゥー教の作品では、今回ご紹介した『信仰のつながり』以外にも、ヒンドゥー教の輪廻と死生観に迫る衝撃のドキュメンタリー映画『バラナシ 死のホテル』も公開されています。こちらも是非ご覧になって下さい。

【コラム】おすすめ!必見作品『信仰のつながり』

アジアンドキュメンタリーズの配信作品の中から、今、特に注目されている人気の話題作をピックアップしてご紹介させていただきます。
 
本ドキュメンタリー作品ページはこちらからご視聴下さい。

『信仰のつながり』 https://asiandocs.co.jp/contents/273


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