アジアのコーヒー文化と歴史を知り、脚光を浴びるロブスタ種を映像で味わうドキュメンタリー映画『進化するアジアンコーヒー』

 
 

今回のドキュメンタリー映画紹介は、世界中で愛される飲み物「コーヒー」の歴史や文化的な側面、生産の実情に焦点を当てた『進化するアジアンコーヒー』です。主な舞台はイエメン、トルコ、ベトナム、イラン。それぞれの国が持つコーヒーの歴史や飲み方を丹念に掘り下げながら、栽培から加工、消費に至るまでの変遷を映し出します。
近年世界的に再評価されつつあるコーヒー豆のロブスタ種に対して、アジア各国がどのようにこの変化に向き合っているのか、そして、アジアの取組みが世界のコーヒーシーンにどのような影響を与えているのかが感じ取れます。それでは作品紹介をさせていただきます。
 

<作品紹介>

ドキュメンタリー作品タイトル:進化するアジアンコーヒー

~広がり続けるコーヒー文化のトレンドを追う。生産地としても消費地としても急成長する、アジア発のコーヒー映画~

 
原題  Growth
制作年/作品時間  2021年製作/作品時間70分
撮影地  イラン、ベトナム、トルコ
製作国  イラン
監督  ヴァヒド・アルヴァンディファー
 
イエメン、トルコ、ベトナム、イラン……気候も民族も歴史も異なる国々で、独自のコーヒースタイルが育っている。コーヒー豆の栽培、加工の技術は向上し、消費地の嗜好は多様化の一途を辿る。カフェイン量が多く、苦味が強いロブスタ種で、コーヒーの新たな価値を築こうとしているベトナム。革命によって途絶えたコーヒーが、社交の場で復活し、大衆に広がったイラン。生活に溶け込み、産業としても確立したコーヒーの世界は、飲み物の枠を超えて、その国の食文化の一翼を担うまでに成長した。コーヒー生産地としても消費地としても大きな割合を占めるアジア。各国の現場から、驚くべきスピードで進化しているコーヒー文化を探る。

[ドキュメンタリー作品・予告編]
 

本作品の見どころをお伝えする前に、コーヒー豆の原種と生産割合、コーヒーベルトといわれる産地の紹介、代表的なコーヒーの種類(銘柄)や特徴に関して、簡単に解説いたします。

<解説!コーヒー豆の原種と生産割合、主要産地>

 

■コーヒー豆の3大原種概要■

コーヒー豆の品種は、世界には約200種類あると言われますが、その品種の原種にあたり、商業的に利用されているのは主に以下の3種類です。
 
アラビカ種 (Arabica)  酸味と香りが高く、スペシャリティの高いコーヒーに使われます。最も広く栽培されている原種です。
ロブスタ種 (Robusta)  苦味とカフェイン含有量が高く、病気に強く、生産性が高いとされます。
リベリカ種 (Liberica)  苦みや強く、スパイシーな香りやウッディーな風味が特徴。世界の限られた地域で生産されています。

■アラビカ種とロブスタ種の生産量割合■

コーヒーの発祥はエチオピアとされ、アラビカ種のコーヒー豆が中東各地に広がり、大航海時代を経て世界中で飲まれるようになった背景があります。現在、コーヒーの世界全体の生産量は「アラビカ種」が約60~70%を占め、「ロブスタ種(カネフォラ種)が30%~40%程と言われています。しかし、近年の気候変動や土壌病害の影響により、病気に強いロブスタ種の作付面積は広がりを見せており、需要と供給面で期待されています。特にベトナムでの生産量が高まっています。
リベリカ種はリベリアが原産国で、シェアは生産量全体の1%程です。フィリピンやマレーシアなどの国で生産されており、産地消費が中心となっています。

■コーヒーベルトの概要と主要産地■

コーヒーは「コーヒーベルト」と呼ばれるコーヒー栽培に適した赤道付近の熱帯地帯で栽培・生産されています。赤道を挟んで、緯度にすると北緯25度から南緯25度あたりの地帯となります。60か国以上とも言われているコーヒー生産国がありますが、主要な産地をご紹介します。

 

◇主要なコーヒー生産地◇

世界最大のコーヒー生産・輸出量を誇る「ブラジル」、輸出量がブラジルに次ぎ第2位の「ベトナム」、第3位の「インドネシア」もコーヒー大国といえます。良質なコーヒー栽培に適した環境の「コロンビア」、モカでも有名な「エチオピア」が産地国として有名です。ホンジュラス、ウガンダ、ペルー、インド、グァテマラ、そしてハワイで生産されるコナコーヒーも世界中で流通しています。
日本では沖縄や東京の小笠原諸島がコーヒーベルトに入りますが、雨季と乾期、寒暖差があまりない環境や台風の影響などでデリケートなコーヒーノキの栽培が難しいと言われています。

<解説!コーヒーの種類銘柄と特徴>

■知っておきたい有名なコーヒー豆の種類と特徴■

アラビカ種からは、多くの種類が派生して生産・商品化されています。代表的な銘柄と特徴をご紹介します。一例ですので、様々な銘柄を楽しみ、好みの珈琲を見つけて下さいね。

 

◇アラビカ種のコーヒー銘柄と特徴◇

ブルーマウンテン(Blue Mountain)  芳醇な香りがあり、酸味・コクのバランスが良い
キリマンジャロ(Kilimanjaro)  しっかりした酸味と甘酸っぱくて爽やかなコク
ハワイ・コナ(Kona)  強い酸味と芳醇な甘味、なめらかな味わい
マンデリン(Mandheling)  酸味が少なく奥深いコクと苦味
ブラジル(Brazil)  ナッツの香りとバランスがとれた風味
グアテマラ(Guatemala)  華やかな香りと酸味、コクある味わい
モカ (Mocha)  花やかで甘み、独特の酸味
ゲイシャ(Geisha)  フローラルな香りで、明るい酸味、個性的な風味
コロンビアスプレモ (Colombian Supremo)  甘い香りと重厚な後味
ケニア (Kenya)  ベリー系のような酸味、柔らかな苦味
 

◇ロブスタ種のコーヒー銘柄と特徴◇

ベトナムロブスタ(Vietnamese Robusta)  強い苦味、濃厚な口当たり。練乳入りの「ベトナムコーヒー」に最適
ジャワロブスタ(Jawa Robusta)  ジャワコーヒーとして知られ、酸味が少なく、苦みとまろやかな香り。
インドロブスタ(India Robusta)  滑らかな苦味とややスパイシーな香り。ミルクとの相性が良い。
 

<コーヒーブレイク:コーヒーを使用したレシピご紹介>

アジアンドキュメンタリーズのファンの方から、コーヒーを使ったレシピをご紹介いただきました。ご興味がありましたら、レシピをお試し下さい。
レシピ名:ほろ苦コーヒーマフィン×甘酒アイシング♪
情報提供:食情報メディア『食ZENラボ』  レシピ考案:料理/食文化研究家 庭乃 桃さん

 
 

<『進化するアジアンコーヒー』ドキュメンタリー作品の見どころ>

『進化するアジアンコーヒー』は、コーヒーの豊かな文化が歴史、歴史的背景、生産地の特性を通じてどのように進化してきたかを描き出す、食文化ドキュメンタリーです。コーヒーの発祥や起源から中東やアジアの国々を調査の展開をし、それぞれの国がどのようにコーヒーを受け入れ、発展させてきたかを細やかに描かれています。

  

■コーヒーの起源と中東・アジアへの広がり■

コーヒーの起源地はエチオピアで、紀元前9世紀頃にはコーヒーが存在していたとされ、アラビア半島や中東、アジア、世界各地へと広がりました。本作で描かれている各国のコーヒー文化として、イエメンでは、その宗教的・社交的な側面を通じて独自の形を築き、トルコのコーヒー文化もまた、無形文化遺産にも登録されている「トルコ式コーヒー」が象徴するように、コーヒーが社交と儀式の中心的役割を担ってきました。一方、イランのコーヒー文化では、かつて革命によって途絶えてしまったコーヒー習慣が、再び都市部を中心に復活し、大衆的な文化として根付いています。そして、ベトナムは、現在コーヒーの生産量・輸出量が世界2位となっており、コーヒー文化とロブスタ種の供給で躍進し、コーヒー業界のゲームチェンジャーとして期待されています。

 

■ゲームチェンジャーとして期待されるロブスタ種■

ロブスタ種の特徴は、強い苦味と高いカフェイン含有量にあり、酸味や香りが優れるアラビカ種との違いがしばしば語られます。これまで流通の主流であったアラビカ種ですが、現代のトレンドである「個性のある苦味」や「持続可能な生産性」を重視すると、ロブスタ種の価値は新たなステージへと進みます。特に、気候変動の影響でアラビカ種の生育が困難になりつつある中、耐病性・高収量・環境適応力に優れるロブスタ種は、コーヒー業界のゲームチェンジャーとして注目を集めています。

■アジアの多様性が生み出すコーヒーの奥深さ■

『進化するアジアンコーヒー』は、単なる食文化ドキュメンタリーにとどまりません。コーヒーの品種比較や精製方法の違いといった技術的な解説から、現地の人々の生活に根差した飲み方のスタイルや各地のコーヒー農園や産地の様子を映像で知ることができます。

■コーヒーの健康効果にも注目■

コーヒーにはカフェインやポリフェノールなどが含まれており、昔から食用されていたコーヒーは、薬学や医学的な見地から研究されていたことが本作でも語られます。コーヒーを単に味わう嗜好品としての飲み物としてではなく、日常のパフォーマンスや健康管理の一部としてコーヒーを見直したい人にとっても興味深いポイントです。
 

<『進化するアジアンコーヒー』の視聴におすすめの方>

1. コーヒー愛好家・カフェ好きの方
日々コーヒーを楽しむ方にとって、この作品は旅するように、コーヒーの文化や歴史に触れられます。特に、ロブスタ種とアラビカ種の違いやフレーバーの背景を知ることで、今まで以上に1杯のコーヒーを豊かに味わえるようになると思います。
 
2. コーヒー産業や持続可能性に関心がある方
コーヒーの生産地問題や気候変動による農業の影響など、社会的・環境的課題に関心がある方にもおすすめです。アジア各国の対応やコーヒー農園の栽培や生産方法を知ることで、世界の需要量が高まっているコーヒーの持続可能性について知ることができる作品です。
 
3. 食文化に興味がある方
コーヒーに関して、各地の文化や歴史を紐解きながら、映像美とコーヒー業界の未来を示唆する本作は、食文化ドキュメンタリーやコーヒー映画の中でも特に完成度の高い作品です。多様な文化が織りなすコーヒーの物語は、知的好奇心を大いに刺激してくれます。

アジアのコーヒーは今、進化の真っ只中にあります。その中心には、ロブスタ種という再評価されるコーヒー豆の存在と、それを支える現地の人々の営みがあります。アジアのコーヒーの文化や歴史、世界事情を知り、アジアの未来とコーヒーの未来を覗いてみませんか。

 

◇その他おすすめドキュメンタリーご紹介

コーヒーに関する作品では、今回ご紹介した『進化するアジアンコーヒー』以外にも『天国の香り インドネシアコーヒー』や『バンドンの若いコーヒー農家』も公開されています。こちらも是非ご覧ください。

 

[天国の香り インドネシアコーヒー URL:https://asiandocs.co.jp/contents/1563]
[バンドンの若いコーヒー農家 URL:https://asiandocs.co.jp/contents/1567]

【コラム】おすすめ!必見作品『進化するアジアンコーヒー』

アジアンドキュメンタリーズの配信作品の中から、今、特に注目されている人気の話題作をピックアップしてご紹介させていただきます。
 
ドキュメンタリー作品ページはこちらからご視聴下さい。

『進化するアジアンコーヒー』 https://asiandocs.co.jp/contents/1565


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