特集「移民の生活」(全3本)

◆移民や外国人労働者は、人口減少社会の救世主か?
総務省の人口動態調査によると、日本の人口は2022年の1年間に80万人以上も減少。この勢いで減少が続けば、今後10年間で大阪府の人口とほぼ同じ800万人が消滅することになります。人材不足は深刻化し、外国人労働者の受け入れは避けて通れない議論となりました。政府は受け入れ拡大に向けた取り組みを加速させ、経済界は歓迎しています。半世紀後には人口の1割を外国人が占めるという試算もあり、「事実上の移民政策」になるのではないかと懸念されています。国内の労働者不足を補うために外国人労働者を受け入れているのは日本だけではありません。世界では2億4000万人以上の人々が、出生国もしくは市民権を有する国とは異なる国で生活し、働いています。
 
◆軽視されてきた外国人労働者の人権
外国人労働者の受け入れについては、各国で制度が異なりますが、国籍や人種による差別は禁止されています。にもかかわらず現実は、最低賃金以下の雇用契約や賃金からの過大な控除、割増賃金の不払いなどが報告されています。また、人手不足のあおりで長時間労働、重労働を強いられ、労働災害や死亡事故なども起きています。日本の技能実習生制度は転職を認めていないため、過酷な労働環境に耐えられなくなった労働者が失踪する原因との指摘も。労働者にとって負担となるのが、就労に際してブローカーに支払う仲介料です。契約期間だけの賃金では返済しきれない場合もあり、長期の不法滞在を生み出す要因になることもあります。
 
◆誰もが幸せになれる共生社会の実現は可能なのか?
移民や外国人労働者が増え、「共生」という言葉がよく使われるようになりました。一方で、「外国人に仕事を奪われる」「環境が変わる」と、共生に否定的、懐疑的な見解も存在します。欧州では移民が本国の家族を呼び寄せ、公共サービスの負担が増大したり、移民の数が増えすぎて生活習慣や文化の違いで摩擦が起きたりといったことも起きています。性急な共生推進によって、かえって対立や分断を招いているのです。外国人を単なる労働力として見るのではなく、ともに社会を支えている市民として理解し、彼らにも市民としての意識を持ってもらうことが、地域社会の安定において重要です。本当の意味での共生は、まだ始まっていません。

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