特集「立ち上がる若者たち」(全3本)

◆危機的な状況に近づきつつある世界
経済格差や教育格差は広がり続け、戦争は長期化、気候変動は年々激しさを増しています。これほど多くの問題を抱えていながら、世界人口は2022年に80億人を突破しました。国連は2030年までに85億人、2050年には97億人に達すると予測しています。人口爆発を続けるアフリカや南アジアとは対照的に、東アジアや欧州では人口減少と高齢化が進んでいます。先進国は、自国民だけで豊かさを維持することが困難な状況にあり、途上国では発展の陰で環境破壊が進み、弱者を犠牲にした成長が続いています。SDGsという言葉が定着したものの、現実は持続可能な社会には程遠い状況です。混迷を続ける世界は、危機的な状況に近づいているのではないでしょうか。
 
◆デジタル社会で連帯し、行動するZ世代
各国が不均衡な社会の是正や環境破壊への対策などに取り組むものの、改善の兆しは見えません。このような状況の中、世界中の若者たちがアクションを起こし始めました。中心になっているのが、いわゆる“Z世代”と呼ばれる、1990年代後半から2010年代前半に生まれた人たちです。彼らは生まれた時から、デジタルの世界がリアルの世界と同じくらい当たり前のように存在しています。かつてはマスメディアや地域社会によって分断されていた世代どうしが、インターネットを通して連帯することが可能になりました。一人の若者の勇気ある発言や行動は瞬く間にシェアされ、志を同じくする者が立ち上がるという連鎖が起きています。
 
◆「変わらない」を「変えられる」に。原動力は未来への希望
海外では、若者の積極的な社会運動が政治を動かす事例が増えてきました。そのテーマが、気候変動やジェンダー問題、貧富の差など、多岐に渡っているのも特徴的です。環境破壊や地球温暖化、経済不況、政治不安に加えてパンデミックも経験した彼らにとって、不安と危険は常に隣り合わせの存在。それゆえに、目の前にある社会問題と向き合い、行動を起こす必要がありました。大人社会を当てにせず、自分たちの力で課題を解決していこうという思考の若者たち。「何も変わらない」ではなく「未来は変えられる」という意識が、彼らの原動力なのです。

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