特集 「木の文化」(全3本)

◆森林大国日本が抱える問題は、未利用の樹木
日本の森林面積は約2500万ヘクタールで、国土の3分の2を占めています。森林率は、OECD加盟国の中でフィンランドに次ぐ第2位。世界有数の森林国なのです。日本の森は減少しているイメージを持つ人も多いのですが、実は過去40年間にわたって森林面積はほとんど増減がありません。一方で、戦後に植林されたスギやヒノキが大きく育ったにもかかわらず利用されないでいる現状もあり、樹木の体積の合計を表す森林備蓄は40年間で2.5倍に膨れ上がっています。有史以来、木と共にあった私たちの暮らしが、現代になって大きく変わってしまったことの証左でもあります。日本においては木を切って利用することは、森を守る上で大切な営みなのです。
 
◆さまざまな用途で活用されるが、国産材の需要は低迷
木は世界中で、加工されて製品となり活用されています。日本でも建築材料を中心に、製紙原料、割り箸など、さまざまな用途に使われているほか、近年はバイオマス発電用の木質チップにも用途が広がっています。木材の利用が進むことで、加工技術も発展しました。飛鳥時代には複雑な木の組み方「木造軸組法」による、法隆寺などの建物も誕生。後の時代には、ヒノキの耐水性を活かした「檜風呂」も登場しました。木材加工の最盛期は江戸時代と言われています。築城や都市開発で重要な建築資材として利用されました。近代以降は、外国からの輸入材に押されて、国産木材の利用が低迷している状況です。
 
◆日本文化を支えてきた、伝統技術の継承について考える
長らく日本の産業を支えてきた伝統技術。その技術継承の危機に直面している業界は、少なくありません。宮大工は現在全国に100人ほどと推測されており、「絶滅危惧“職種”」と言われるほど。木製品が多い仏事業界も、寺の後継者不足も相まって事業継承が危ぶまれています。和紙業界では、手漉き和紙の需要があるのも関わらず、後継者が少なく供給がおいつかない状況。機械漉き和紙で供給をまかなっています。日本文化の一翼を担ってきた木造建築や木製品は、高い技術が込められ、海外での評価も高いものばかりです。先達が築いてきた伝統技術や文化の価値を、見直す機会になる作品をお届けします。

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