特集「オッペンハイマーと原爆」(全4本)

◆「原爆の父」が変えた、戦争の歴史と軍事バランス
2024年の第96回アカデミー賞で、作品賞や監督賞、主演男優賞を含む7部門で受賞したのが『オッペンハイマー』。世界で初めて原子爆弾を開発し「原爆の父」として知られるロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた伝記映画です。原爆の登場は、世界の軍事バランスを劇的に変え、新たな対立や緊張の起点となったと言っても過言ではありません。そして今、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのパレスチナ・ガザ地区侵攻など、世界各地で緊張感が高まり、再び核戦争の危機が迫っています。人類の歴史において原爆は何をもたらしたのか、考えるきっかけとなる作品を用意しました。
 
◆米国で揺らぎ始めた、原爆投下への評価
広島・長崎への原爆投下について、米国では「戦争の早期終結につながった」「結果的に日米双方の多くの命が救われた」との評価が多数を占めています。原爆の破壊力を見せつけることで日本を降伏に追い込み、本土決戦を回避することで両軍の兵士や民間人の犠牲者を出さずに済んだということです。米研究所の調査によると、原爆使用を「正しかった」とする米国人は、終戦まもなくの調査では8割を超えていましたが、2015年には56%まで減少。18歳~29歳の若者の間では47%と半数を割り込んでいます。2020年に行われた別の調査では18~24歳のいわゆる“Z世代”の52%が「米国は日本に謝罪すべき」と答え、「謝罪すべきでない」と考える23%を大きく上回っています。
 
◆被爆の惨禍を伝え、思いを拡散していくことが使命
“唯一の被爆国”である日本は「核兵器のない世界」の実現に向けて、核軍縮・不拡散を国の使命として取り組んでいます。しかし一方で、米国の核抑止力を含む拡大抑止が日本の安全保障にとって不可欠であることも認めています。非人道的で無差別に大量殺人を可能にする核兵器は、いかなる理由があろうともその使用を許されるものではありません。世界各地で国家や民族間の緊張が高まっている今こそ、核兵器に「NO」を突きつける時なのです。広島・長崎で起きた惨禍を後世に伝え、反核の思いを世界に拡散していくことが、私たち人類の使命といえるのではないでしょうか。

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