特集「スモーキーマウンテンの子どもたち」(全3本)
◆「東洋最大のスラム」で生きる貧困層の人々
フィリピン・マニラ市北部に、かつて「東洋最大のスラム」と呼ばれたゴミ捨て場“スモーキーマウンテン”がありました。1954年にゴミの投棄場所となった漁村は、その後マニラじゅうからゴミが運び込まれるようになりました。1990年代前半には、29ヘクタールにおよぶ巨大なスラムを形成。3000世帯、2万人を超える貧困層が暮らしていたにも関わらず、フリピン国内で発行される地図には載っていない「地図にない村」でした。そこでは仕事を得られなかった人たちが集まり、ゴミの中からプラスチックや紙を集めてジャンクショップに売り、生計を立てていました。
◆フィリピンが抱える経済格差を象徴するゴミの山
スモーキーマウンテンがゴミの山として世界に知られるようになった1994年、フィリピン政府はスモーキーマウンテンへのゴミの廃棄を禁止しました。ゴミ処理場を移転させ、居住者は退去させて仮設住宅に入居させました。しかし、多くの居住者は仕事がないため家賃が払えませんでした。新たなゴミ処理場へ移り住み、ゴミを拾って売る生活に逆戻りしたのです。その場所は“スモーキーバレー”と呼ばれ、今も多くの人が暮らしています。ゴミ処理場に暮らす人々の存在は、フィリピンが抱える経済格差、貧困問題の縮図とも言えます。
◆劣悪で危険な環境の中で力強く生きる住人たち
スモーキーマウンテンでは、未就学の幼い子どもがゴミ拾いをすることも珍しくありません。ほとんどの子どもが学校に通えず、家の生計を助けるためにゴミを拾います。ゴミには有害な物質も含まれており、呼吸器系の疾患や皮膚病などの病気にかかる子どもたちも多く、幼児の死亡率は、2001年当時約30%と高い水準でした。悪臭や排気ガスなどで、生活環境も脅かされていました。それでも住民たちは、日々の暮らしの中に喜びを見出し、未来に希望を持って生きているのです。彼らの姿を30年にわたって見つめてきた、四ノ宮浩監督の3作品をお届けします。
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