特集「分断されるユダヤ人」(全3本)
◆戦禍を広げるイスラエルの暴走
スンニ派のイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘に端を発したイスラエルの攻撃は、パレスチナ・ガザ地区だけでなく、シーア派のイスラム武装組織ヒズボラとの戦闘により、レバノンにも戦火を広げています。その銃口は国連機関にも向けられ、平和維持のためにレバノン南部に駐留している国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の施設に戦車で突入し砲撃。ガザで活動する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)についても解体を求めるなど、国際的にも孤立を深めています。イスラエルに同情的だった米国内でも、世論がイスラエル非難に傾きつつあります。暴走を止める術はないのか。イスラエル国内外で胎動している、若者たちの視点に迫りました。
◆民族教育がもたらすユダヤの正当性
イスラエル国民の熱狂的な愛国心は、徹底した民族教育によるものです。ヨルダン川西岸地区もガザ地区も、東エルサレムやイスラエルもすべて、古代ローマ時代からパレスチナと呼ばれる土地の一部でしたが、聖書にはユダヤ人の王国の土地と書かれており、それを根拠にユダヤ人は古来の祖国とみなしているのです。1948年、ユダヤ人はパレスチナの地にイスラエル建国を宣言。土地を追われた70万人のアラブ人は、難民となって各地に離散しました。アラブ人の間では「ナクバ(大惨事)」と呼ばれる悲劇を、イスラエルの学校では「無人の土地に、我々が戻った」と教えます。ユダヤ人にとっては、パレスチナ全土が自分たちのものという認識なのです。
◆Z世代を中心に台頭してきた反ユダヤ主義
かつて親イスラエルの世論が強かった米国で、大学を中心にイスラエルへの抗議デモが多発しています。「Z世代」と呼ばれる若者たちがSNSから得たガザの被害状況とともに同情論を拡散。反戦デモという大きなうねりを生んでいます。アラブ系の人々の訴えを発端に、ユダヤ系左派を名乗る人たちも加勢。怒りの矛先はイスラエルだけでなく、ガザの惨状を正しく伝えないマスメディア、イスラエル支持の姿勢を崩さない米国政府にも向けられています。この傾向は世代間で温度差があり、米国ラジオ局の調査によると、年齢が高いほどイスラエル支持に傾き、若い世代ほどパレスチナ支持となっています。混迷を深めるパレスチナ問題を解決に導くのは、Z世代の若者たちかもしれません。
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