
特集「脱北者たち」(全3本)
◆危険を冒してまでも国外へ逃れる北朝鮮住民
脱北者とは、北朝鮮から外国に逃れた北朝鮮住民のこと。脱北の大きな理由は、困窮した暮らしや食糧難、人権侵害があると推測されています。北朝鮮では国の許可なく出国することが禁じられており、脱北は反逆罪に等しい不法行為として捉えられています。それでも北朝鮮と国境を接する中国吉林省には、1万人から30万人もの北朝鮮人が隠れ住んでいると言われています。脱北者の受け入れ先で最も多いのが韓国。韓国に亡命した脱北者の多くは、北朝鮮出身者のコミュニティを形成。新たな亡命者の手助けをしている者もいます。一部の人は韓国社会で活躍していますが、差別や偏見に苛まれたり、自由社会になじめなかったりと、困難に直面している脱北者も多くいます。
◆亡命先で待ち受ける、シビアな現実
3万人を超える韓国在住脱北者の2022年の失業率は6.1%で、国民平均の3.0%のおよそ倍。南北の社会体制が大きく異なる中、学歴・経歴の問題や情報不足などが原因と考えられます。韓国統一省によると、脱北者の給与は韓国人の平均月給よりも約500ドル低いという統計データがあります。短期間で仕事を辞める人も多く、脱北者側と雇用側の相互理解も課題です。男女比率では7割以上が女性で、世代別では半数以上が20代から30代。その多くが脱北仲介者による暴力、命の危険、人身売買、強制結婚などにさらされながら何年間も逃亡者として過ごした末、ようやく韓国へとたどり着いた人たちです。
◆同じ民族でも拭えない、韓国人の拒絶感
韓国の行政安全省の調査により、韓国人の脱北者に対する心理的ハードルや偏見は、外国人に対するもの以上に高いことが判明しました。脱北者を「受け入れられない」とした人は22.2%で、外国人労働者や移民を「受け入れられない」とした人(10.0%)の2倍以上です。調査時の南北関係の改善や悪化が「受け入れ度」に影響を及ぼす傾向があるものの、同じ民族とは思えないほどネガティブな数値です。国家として南北統一は悲願ですが、国民感情とは大きな隔たりがあることが、調査結果に表れています。
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