
特集「誕生の悲しみ」(全3本)
◆世界中に見られる男性優位と女性差別の社会
女性差別は世界的に見られますが、特にアジアの国々の多くでは、家父長制を基盤とした社会が発達し、男が家族の中心とされてきました。また、儒教やヒンドゥー教など男性を優位とする宗教的価値観が、その社会構造を強化しました。そのため男児は家系の継承者として重視され、特に儒教では家族の繁栄や祖先崇拝の重要な役割を務めるとされていました。社会的に優遇される男性とは対照的に、女性はその役割を家庭内に限定され、教育や就業の機会が制限されることが、現在も続いています。法整備だけでは解消しない、女性差別の問題について“誕生”をテーマに作品を選定しました。
◆女児を産み育てることを望まない価値観
男児を偏重する地域の多くでは、男性は主要な稼ぎ手であると同時に、両親が老いたときに支える役割を果たすものとされています。逆に、女性は結婚して他家に嫁ぐものであり、養育が経済的な負担と見られる場合があります。さらにインドでは、ヒンドゥー教徒に「嫁入り持参金制度」が存在しており、女児の出生が経済的負担になるという社会通念が根強く残っています。医療技術の発達により出生前に性別が判定できるようになると、中国やインドでは女児が出生する前に中絶することが一般化し、男女比の不均衡も起きています。女児を望まぬ行為が、人口減少の危機を招いているのです。
◆法整備だけでは解決できない不平等
ジェンダー平等の中でも、とりわけ重要視されているのが女児の権利です。質の高い教育を受けることが社会進出の鍵となるのに、いまだに教育を受ける権利が制限されている国や地域が存在します。また、幼い年齢で強制的に結婚させられる“児童婚”も教育や就労の機会を奪っています。これらの問題の解決に向けて、法整備やジェンダー教育を進める国もありますが、政治体制や宗教観、紛争、経済状況などの要因により、男女不平等が続いている国も多く残っています。制度の改正だけでは解決しない女児への差別。持続可能な世界に向けて、普遍的な価値観の共有と実行が求められています。
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