特集「ビジネス至上主義」(全8本)

◆巨万の富と同時に格差や分断も生み出すビジネス
世界経済は、技術革新はもとより人口動態の変化や地政学的な影響など、さまざまな要因に左右されながら拡大を続けています。デジタル化の普及とテクノロジーの進歩は、AIやビッグデータ、サイバーセキュリティなどの分野を進展させ、環境技術の進歩は持続可能なビジネスの拡大を後押ししています。高齢化の進行はヘルスケアビジネスの成長をもたらしました。次々と現れてくるビジネスチャンスは、これを掴んだ者に巨万の富をもたらす一方、格差の拡大や社会の分断を生むこともあります。現代社会を席巻する「ビジネス至上主義」の功罪に迫る作品を用意しました。
 
◆利益追求が理念やミッションを骨抜きにすることも
企業には崇高な理念やミッションがありますが、言葉の裏に矛盾や欺瞞を隠しているビジネスも少なくありません。例えば、再生可能エネルギーを推進する企業が、製造過程では資源を大量消費し環境負荷を高めていたり、技術の進歩により一部の企業や個人に利益が集中し、格差が広がったりといったケース。また、利益追求を優先するあまり、労働者の権利を侵害する、地域の利益を損なうなど、社会的不平等の拡大を招いてしまうこともあります。グローバル化の反動で自国経済の保護を優先するあまり、保護貿易や国家間の緊張を招く為政者も台頭。民間だけでなく政治レベルでもビジネス至上主義の弊害が現れています。
 
◆人間重視のビジネスが持続可能社会の鍵
ビジネス至上主義は、しばしば人間の尊厳や社会的価値との衝突を引き起こします。企業が自社の利益を優先し、倫理観やコンプライアンス、人権などを軽視してきたことで、環境破壊やそれに伴う健康被害、製品やサービスの偽装、顧客情報の漏えいといったさまざまな社会問題が発生。グローバル企業では途上国での強制労働や児童労働、環境破壊といった問題が多く報告されています。企業は今や、環境・気候変動問題や人権尊重等に取り組むことが社会的責任として求められています。それこそが持続可能な成長につながるビジネスの、重要な鍵なのです。

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