特集「ガザ 絶望の声を聴け」(全6本)

◆名ばかりの停戦合意は延長されることなく終了
2025年1月15日、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの間で、6週間の停戦と人質の解放で合意が成立しました。この合意にはガザ地区の住民への人道支援物資の配布拡大と並行して、ハマスが拘束している人質の段階的解放、ガザの人口密集地域からのイスラエル撤退が含まれていました。しかしイスラエル国防軍は、停戦期間中であるにもかかわらずガザ地区を空爆し、150人以上を殺害したのです。ラマダン(イスラム教の断食期間)が始まった直後の3月2日には、食料や燃料を含むすべての人道支援物資の搬入を停止。さらに数日後、50万人のパレスチナ人に飲料水を供給していたガザ地区の主要な海水淡水化装置への電力供給を止めました。停戦合意は延長されることなく3月16日に期限を迎え、イスラエルはガザへの大規模空爆を再開しています。
 
◆米国の関与がガザ市民の命運を左右する可能性も
2025年2月、トランプ米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相との共同記者会見の中で、ガザ地区を米国が所有して「中東のリビエラ」へ再開発すると発言。ガザに暮らす210万人のパレスチナ人について「エジプトやヨルダンといったアラブ諸国へ移住するべき」と発言し、物議を醸しました。背景には「ガザはもう人が住める場所ではないほど厳しい状況」という、中東特使からの報告があったと言われています。しかし、ヨルダンやエジプトはパレスチナ難民の受け入れを拒否しています。トランプ氏はこの発言をめぐって、翌月には「一人のパレスチナ人も追放されない」と一転。為政者の思惑に、ガザの市民たちが振り回される状況が続いています。
 
◆悪化の一途を辿る生活環境の中で生きる
長期にわたる封鎖や紛争の影響で、ガザ地区の市民生活は危機的な状況に追いやられています。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、ガザ地区では生活できる場所が紛争前の3分の1未満となり、住民は餓えに苦しみ、絶望的な状況だと指摘。国連の世界食糧計画(WFP)は、ガザでの食料支援の備蓄が底をついたと発表しました。インフラ施設も破壊され、電力や水へのアクセスも難しく、生活環境は悪化の一途を辿っています。空爆による医療崩壊と、不発弾の危険、精神的なストレスなど、市民が直面する問題は多方面にわたります。困難な状況の中で市民は生活を続けていますが、国際社会による支援と、一日も早い平和的な解決が求められています。

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