
特集「混迷する中東」(全5本)
◆激化するイスラエルとイランの争いの行方は?
2025年6月、イスラエルは「核兵器開発を止めるため」という理由でイランの核関連施設や軍事拠点を空爆するとともに、革命防衛隊のトップを殺害しました。対するイランは弾道ミサイルやドローンで反撃。双方に多数の死傷者が出ました。これにより、米国がイランと進めてきた核協議は中止。その後、米国はイランの核施設3カ所を空爆しました。苦境に陥ったイランはロシアに支援を要請。プーチン大統領はイスラエルと米国の攻撃を非難しましたが、イランへの具体的な支援については言及せず、停戦を仲介する姿勢も見せません。勢いを増すイスラエル、核協議が頓挫した米国、事態を静観するロシア……。中東の歴史が、またも大きく動こうとしています。
◆両国の関係悪化は、イスラム革命が出発点
ともに中東の国家でありながら、国境は接していないイスラエルとイラン。民族的な摩擦もない両国の関係が悪化したきっかけは、1979年のイラン革命でした。米国の支援で西洋化を進めていたイランが当時の国王を追放。フランス亡命中のイスラム法学者ホメイニ師を最高指導者に迎え、イスラム原理主義国家を誕生させました。イランは即座にイスラエルとの国交を断絶し、イスラエルの国家承認も否定。イスラム教徒にとって聖地であるエルサレムを首都にしたことへの反発と、革命前のイランを手引きしていた米国と親密な関係にあることが、イスラエルとの対立の要因と言われています。
◆テロ組織の支援で築いた、イスラエル包囲網
革命後のイランは、反イスラエル武装組織による「抵抗の枢軸」勢力の拡大にも力を入れてきました。イスラエルの隣国レバノンを拠点にするヒズボラは“世界で最も武装が進んだ非国家主体”と呼ばれ、2023年10月以降、イスラエルとの国境付近で衝突を繰り返してきました。イランの支援を受けるヒズボラの戦力は「イスラエル全土を攻撃できる」と推定されています。イランは他にも、アラビア半島南端、イエメンのフーシ派や、パレスチナ自治区ガザのハマスなども支援。いずれも米国からテロ組織に指定されています。2024年12月に崩壊したシリアのアサド政権もイランが後ろ盾となっていました。親イラン政権の崩壊が、イランの戦略にどう影響するか、注目されています。
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