
特集「地球温暖化の危機」(全5本)
◆数百万年レベルの変化が、この数十年で起きている
気候変動には大別して二つの要因があります。一つは自然によるもの。太陽活動の変化や火山活動、海洋変動などにより、数万年から数十万年という長い時間をかけて変化しています。もう一つは人為的な要因によるもので、化石燃料の燃焼により排出される二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガスや、二酸化炭素を吸収する森林の破壊などが該当します。近年問題視されている気候変動は、人為的な要因によるものを指します。この変化は数十年から数百年という、地球の歴史から見れば非常に短い時間に起きています。地球全体のCO2濃度は年々上昇しており、2015年には400ppm(0.04%)を超えています。過去に400ppmを超えていたのは300万年以上も前であり、私たち人類は経験したことがないレベルの気候変動危機に直面しているといえます。
◆各国の足並みが揃わない温暖化対策の取り組み
気候変動への取り組みは、国際社会全体の重要な課題です。地球温暖化に人々の関心が集まり始めたのは、1980年代の終わり頃から。CO2と温暖化の関係が取り沙汰され、1992年に国連が地球サミットを開催し、気候変動枠組条約が締結されました。翌年から年に1度、締約国が集まる気候変動枠組条約締約国会議(COP)が行われています。2024年のCOPでは、先進国が途上国の気候変動対策を支援するための「気候資金」引き上げの合意がありましたが、新興国や途上国は「これまで温室効果ガスを排出しながら経済発展を遂げてきた先進国が、より大きな責任を負うべきだ」として不満をあらわにしました。またトランプ米大統領は2025年1月に温室効果ガスの削減目標を定めた「パリ協定」からの離脱を表明。気候変動対策に消極的な国が増えることが懸念されています。
◆食糧不足や国土喪失のリスクが目の前にある
近年問題視されているテーマが、気候変動による「損失と損害」です。干ばつで作物が育たず食糧不足に陥ったり、井戸の水が枯れてしまったりといった被害や、海面上昇で国土を喪失したという事例が報告されています。気候変動の影響は、インフラが脆弱な途上国ほど被害を受けやすい傾向が見られます。気候変動に関する科学的評価を行う国際的な組織IPCCは、世界の平均気温が2018年よりも2度上昇すると「人口の36.9%が、少なくとも5年に1回は深刻な熱波にさらされる」「昆虫の18%・植物の16%・脊椎動物の8%が喪失する」等の悪影響が発生すると警告しています。すでに世界各地で干ばつや熱波、海面上昇などが観測されています。気候変動は、人類が今すぐ取り組むべき課題といえるでしょう。
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