特集「中国の脅威」(全8本)

◆軍事、経済、サイバー 多様化する中国の脅威
軍事面、経済面ともに影響力を増す一方の中国。国際法と国際秩序に対する挑戦を通じて、世界の脅威となっています。急速な軍事費の増加と軍事力の近代化、多様化は、宇宙空間やサイバー空間でも存在感を発揮。米情報機関は「中国軍は大規模言語モデルを使用し、偽ニュースの作成や、攻撃ネットワークの構築などを計画している可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。世界第2位のGDPと14億の人口という、経済力と巨大市場を併せ持ち、欧州やアフリカも含めた経済圏を築く中国。融資先の国に巨額の債務を負わせ、港湾の運営権を奪い取るといった手法に批判が集まっています。自由や民主主義とは対極にある体制でありながら、成長を続けるモンスター国家が目指すものは何なのでしょうか。
 
◆近隣諸国にも圧力をかけ、自国の権益を拡大
中国が周辺国に与えている最大の脅威は、南シナ海での軍事拠点化と威圧的な「グレーゾーン」戦術です。中国は2014年以降、南沙(スプラトリー)諸島の7つの礁を大規模に埋め立て、3000m級の滑走路や格納庫、レーダー施設を備えた軍事拠点を建設。これにより、南シナ海全域における作戦遂行能力と戦力投射能力が大幅に向上しました。特にフィリピンに対しては、自国のEEZ内にある礁を標的とし、中国海警船が放水砲、レーザー照射、衝突といった、武力行使には至らない威圧的な嫌がらせが常態化しています。また、中国は台湾を「省」とみなし「一つの中国」を主張。2027年までに軍事行動を起こす可能性が指摘され、台湾の民主主義と自治を脅かしています。
 
◆監視、情報統制、民族浄化 人権蹂躙は続く
中国政府による人権への脅威は、新疆ウイグル自治区におけるムスリム(ウイグル族)への組織的な弾圧に象徴されています。これは「文化的なジェノサイド」と表現される状況であり、中国政府は再教育収容所の運用を続け、150万人ものムスリムを裁判なしに拘束しているという報告があります。元収容者や元刑務所職員の証言によると、施設内では虐待や拷問、レイプが常態化しているほか、女性には強制避妊が行われていることも報じられています。顔認証や会話記録・分析を含む徹底した監視体制と情報統制が敷かれ、新疆は事実上「壁のない監獄」と化しています。中国がこうした人権侵害を続けるにもかかわらず、2022年には北京で冬季五輪が開催。人権蹂躙国家での国際イベント開催の是非が問われることとなりました。

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