特集「自由のために」(全7本)
◆国家の弾圧から逃れ、命賭けの越境行動
2022年後半から2023年にかけて、自由と人権を求めて米国を目指す中国人が急増しています。しかし彼らの行く手には、米中関係の悪化という大きな壁がありました。外交対立や感染症対策に伴い、正規ビザの発給数が激減したのです。行き場を失った人々は、ビザ不要のエクアドルなどを起点に、中南米の熱帯雨林を踏破する過酷な不法ルート(走線)へ追い込まれています。成功者のSNSでの体験談拡散も渡航を後押ししました。しかしそこには、過酷な自然や犯罪組織の存在、高額な費用など多大なリスクがあります。「自由を求める思い」と「正規のルートが閉ざされた現実」。この2つが重なり、多くの人々が危険な旅を選ばざるを得なくなっています。
◆搾取ビジネスと受入国のパラドックス——自由の代償
新天地に辿り着いた移民たちを待ち受けるのは、厳しい経済的試練です。亡命申請中の労働許可取得には長期間の待機が必要で、その生活難につけ込む悪徳ブローカーが暗躍しています。我が子に法的保護を与えるため米国で出産する富裕層の「バースツーリズム」の根底にも、自国への不信と安心への強い渇望が存在します。一方で、受け入れ国の米国は国境警備を強めつつ、低賃金労働市場では不法就労者に依存せざるを得ない構造的ジレンマを抱えています。自由の獲得と現実の生活苦の間で揺れる移民の姿は、現代世界の経済的歪みを浮き彫りにしています。
◆亡命先を侵食する「国境を越えた抑圧」の脅威
強権政治から逃れ自由な国へ亡命した人々に、安息の時は訪れません。中国政府は海外に逃れた異議申し立て者や活動家に対し、監視やスパイの送入、物理的襲撃、本国に残る家族への脅迫といった多角的な圧力を行使しています。これは「国境を越えた抑圧(TNR)」と呼ばれ、国際社会で深刻な人権問題として警戒されています。素顔を隠して活動せざるを得ない芸術家らの姿が示す通り、強権国家の監視網は亡命者の人権を侵すだけでなく、受け入れ国における表現の自由や民主主義の根幹をも内側から揺るがしています。遠い国の問題ではなく、私たちが享受している自由さえも危機に面しているかもしれません。
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