特集「クルドの苦しみ」(全4本)
◆国家による政治的排除と自治の剥奪
クルド人は長年、国家の枠組みの中で政治的権利や自治を阻まれ続けてきました。かつてトルコのジズレではクルド人女性市長が誕生するも、軍による包囲戦と激しい弾圧のなかで解任に追い込まれました。こうした抑圧は近年も続いており、トルコでは2024年の統一地方選後に親クルド派「国民平等民主党(DEM)」の当選市長らが相次ぎ解任・更迭され、政府任命の管財人に差し替えられる事態が発生しています。さらにシリアでも、IS壊滅に尽力したクルド人主体の「シリア民主軍(SDF)」が、2024年末のアサド政権崩壊後の新暫定政権による激しい攻勢と圧力に直面し、2026年に入って油田管理権の移譲や軍・行政の国家統合を余儀なくされるなど、悲願の地域自治を後退させる苦境が続いています。
◆近代化開発の美名の下で故郷と歴史の喪失
トルコ南東部チグリス川沿いの町ハサンケイフは、クルド人らが何世代にもわたり暮らしてきた1万2000年の歴史を誇る街です。しかし、トルコ政府主導の「南東アナトリア開発計画」によるダム建設により、街全体が水没。数千人の住民は住み慣れた家や長年培ってきたコミュニティを奪われ、数キロ先の新設ニュータウンへの立ち退きを余儀なくされました。新天地では住宅の改築や壁の塗り替えすら禁じられ、若者から高齢者まで、多くの人々が体調不良や故郷喪失の深い苦しみを抱えています。「開発」の名の下で、数千年の歴史遺産や民族の文化的アイデンティティ、日々の営みが沈められていく悲哀は、クルド人が直面するもう一つの過酷な現実です。
◆過激派の虐殺トラウマと周辺国での不当な弾圧
2014年の過激派組織ISによるヤジディ教徒虐殺では、数千人が拉致されました。幼児期に連れ去られ児童兵として洗脳された子どもや、性奴隷とされた女性たちは、今なお癒えない深刻な心的外傷(PTSD)を残しています。こうした紛争の傷痕に加え、近年の周辺国における組織的弾圧も深刻です。イランでは2022年、ヒジャブ着用をめぐって逮捕された
マフサ・アミニ氏の急死に伴う抗議デモ以降、クルド人に対する過剰な武力行使や恣意的な大量拘束、母語教育の禁止が激化しました。さらに2024年から2025年にかけても逮捕者や死刑判決、処刑者の極めて高い割合をクルド人が占めるなど、民族的・政治的アイデンティティを理由とした過酷な生命の危機と構造的差別にさらされ続けています。
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