特集「中国のラットレース」(全7本)
◆構造的就職難と「卒業即失業」の現実
現代中国の若者を覆う最大の絶望は、努力が報われない「労働市場の構造疲弊」です。2023年6月に都市部の16〜24歳の若年失業率が21.3%という過去最高を記録したのち、2024年8月にも18.8%に達するなど深刻な高止まりが続いています。さらに大学新卒者は年々急増し、2026年には過去最多の1270万人に達して「卒業即失業」という自嘲が現実味を帯びています。政府は製造業やAIなどハイテク主導の成長へ舵を切っていますが、これが文系学部の大規模な統廃合を招き、企業の採用枠不足やAIによる業務の代替と重なって若者の受け皿を奪っています。希望する職に就けず、応募しても不採用が続く中で、若者たちは社会構造の壁に直面し、強い無力感を深めています。
◆制度化する逃避:「専業児女」と「青年養老院」
過酷な競争環境から降りる動きは、単なるネットスラングの「寝そべり」を超えて具体的な生活様式へと移行しています。象徴的なのが、就職を諦めて実家で家事や高齢の親の世話を担い、小遣いを得る「専業児女(フルタイムチルドレン)」の急増です。また、都会のプレッシャーや長時間労働に燃え尽きた20〜30代が、地方の農村に新設された「青年養老院(若者向け共同生活施設)」に避難し、安価な滞在費で他者と心を通わせる事例も相次いでいます。これらは一見すると自由な休息に見えますが、長引く経済の低迷や高額な家賃、努力が生活向上に直結しない社会システムに対する、若者たちの消極的かつ切実な自己防衛の表れでもあります。
◆若者世代のメンタル危機と「社会への不信」
未来への閉塞感は、若年層の精神的健康と社会観を根底から揺るがしています。2024年の調査報告では、留守児童や過剰な学業圧力に晒される生徒の間で抑うつ・不安リスクが顕著に高まっている実態が明らかになりました。さらに大学生を対象とした意識調査でも、約9割が激しい競争環境に晒され、他の世代と比べても「社会は不公平だ」と強く感じていることが示されています。経済成長の恩恵を実感できず、将来の不確実性が高まった結果、若者の間では公的年金の納付を忌避する動きや、格差を個人の怠慢ではなく制度の欠陥とみなす悲観主義が定着しました。「頑張れば報われる」という建前が崩壊した今、若者たちの絶望は社会からの静かな離脱へと向かっています。
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