特集「ロヒンギャの行方」(全3本)
◆国籍剥奪の歴史とミャンマー軍の計画的な暴力
2017年8月に70万人以上が国外へ逃れたロヒンギャ危機は、長年の差別と国籍剥奪を背景に発生しました。1982年の国籍法によって多くのロヒンギャが国籍を認められず、移動や教育、就労などの権利を制限されてきました。さらに2024年には、ミャンマー軍と少数民族武装勢力アラカン軍(AA)の戦闘が激化し、ロヒンギャ住民への強制徴用や村落の焼き討ち、殺害などが報告されました。人権保護団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは、2024年5月にAAによって少なくとも170人が殺害された疑いのある事件を詳細に報告しています。迫害の責任を国際法廷で問う動きが進む一方、現地では今も住民の安全が脅かされています。
◆過密キャンプから「隔離生活」への固定化と支援の危機
バングラデシュのコックスバザールには、世界最大規模の難民キャンプが形成されています。2026年9月時点で、同国に暮らすロヒンギャ難民は120万人を突破。2024年以降でも新たに約15万人が流入しています。一方、難民の一部はベンガル湾のバサンチャール島へ移住。2024年までに約3万7000人が移送されています。島では教育や医療などの支援が改善した面もありますが、サイクロンの脅威に晒されるこの島では移動の自由や就労の権利は厳しく制限。「新たな牢獄」として住民の絶望と孤立を深めています。地元社会との摩擦や統合を拒む受け入れ国の管理下で、長期化する避難生活をどう人間らしく支えるかという重い課題が突きつけられています。
◆声を奪われた人々の挑戦とコミュニティの存続
ロヒンギャの人々は、長期化する避難生活のなかでも、自らの文化やコミュニティを守る活動を続けています。2025年には、難民キャンプや周辺地域で若者が主体となり、図書館や読書クラブ、庭園などをつくる地域活動が展開されました。国連バングラデシュ事務所によると、こうした若者主導の取り組みは初年度に18件実施されています。一方、難民キャンプの若者の75%は教育機会へのアクセスがなく、就労の法的な制約も抱えています。スマートフォンやSNSは、外部に声を届ける手段となる可能性を持ちますが、通信環境や情報発信の自由には制約もあります。故郷への帰還が実現しない現状だからこそ、次世代が希望を持って生きられる環境をどう確保するかが問われています。
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