特集「アートって何?」(全3本)

◆考えれば考えるほど、曖昧?
アートが何であるか、普段アートについて真剣に考えたことがなければ、明確に説明するのは難しいでしょう。例えば、数千万円で取引される画家の作品はアートであり、誰も見向きもしない素人の絵はアートではないのか?例えば、巨匠ゴッホの名画はアートだが、ゴッホの作品を真似て描いた複製画はアートではないのか?突き詰めて考えれば考えるほど、曖昧な答えしかみつからず、疑問は解決されません。一般的に価値あるアートは、学術的に高い評価を得て、美術史に位置づけられるような作品でしょう。美術館のキュレーターや美術学者、権威あるディーラーがその作品を重要と位置づけ、他のものより優れているとされる作品にアートとしての価値が認められるのです。評価したり、決めたりするのは専門家であり、彼らの判断がアートの基準になっています。そして、世に出されたアートは、「商品」となり、マーケットで値段がつけられていきます。最終的には、アートの買い手がいくらで買うかによってその価値が決まります。
 
◆アートだといえば、それはアート?
しかし、世の中には、専門家が見向きもしないアートにあふれています。もちろん、アートには定められたルールも規定もなく、その価値を見出す基準さえあいまいです。自らの創作や行為を自称アートとして売り出し、値段を自由に決めても、誰からも咎められることはありません。それがむしろアートの出発点だったりします。20世紀のアメリカの画家、彫刻家、美術家で、美術評論家でもあるドナルド・ジャッドは、こう言いました。「誰かが自分の作品はアートだといえば、それはアートである」。わかったようで、わからない。決められているようで、決められていない。それがアートの価値です。けれども、私たちが、さまざまなアートと向き合う中で、何かを感じ、何かを考え、そして作品を通して自身に秘められた記憶や感情、何らかの思いが呼び起された時に、表現者の思いやメッセージがあなたに届き、作品やアーティストへの共鳴が生まれるでしょう。そこから、それぞれのアートがはじまるのかもしれません。

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