特集「未知の国 イラン」(全3本)

◆アメリカとイランの板挟みで苦慮する日本
日本の伝統的な友好国とされるイランは、多くの日本人にとって “未知の国”です。イランが日本にとって重要な石油供給国であることと、親日であるというエピソード以外に、日本のメディアがイランの実像を伝えることはほとんどありません。一方、イランをとりまく中東情勢は緊迫しています。国際テロへの支援や核兵器開発による経済制裁にからんで、長年敵対関係にあるアメリカとの対立がますます激化し、一触即発の状態が続いています。アメリカの同盟国であり、イランの友好国でもある日本は、「アメリカの顔色を窺いながら、可能な範囲でイランとの関係を維持、強化する」という板挟み状態です。国際社会において脅威ととらえられているイランについて、日本が友好国を標榜するのであれば、私たち日本人はもっとイランという国の実像を国際的な視点から正しく冷静に認識し、向き合い方を考える必要があるはずです。なぜならイランは、私たちが掲げる民主主義社会とは大きく異なる価値観に基づく国家だからです。
 
◆宗教が政治を支配する宗教国家イラン
イランは、宗教が政治を支配するという現代の世界では珍しい宗教国家です。国民にはイスラム教の戒律を厳格に守らせ、違反した者には死刑を含む苛酷な懲罰が課されます。イラン政府による国民への人権弾圧は、国連も警告や抗議を繰り返していますが改善はみられません。また、報道に対する規制も強く、ジャーナリストへの弾圧は深刻です。一方で、したたかな国民は、若者たちを中心に自由を求めて当局の取り締まりを巧みにすり抜け、禁じられた生活文化を楽しむ人々が少なくありません。興味深いのは、敵対するアメリカ文化への関心や憧れが街にあふれていることです。テヘランの電器店では、アップルのロゴマークが至る所に飾られ、iPhoneやアップル製のコンピューターが売られています。コカ・コーラやハンバーガーも人々に愛されています。ペルシャ帝国としての長い歴史と伝統、40年前の「イラン革命」で始まった宗教国家の政治、裏表のあるイラン社会…。まずは不思議の国イランを知ることで、中東情勢を俯瞰してみてください。そこから国際社会における日本の立ち位置が見えてきます。

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