特集「ミャンマーの苦悩」(全3本)

◆クーデターにより、民主主義体制の危機
ミャンマーでは2021年2月1日、クーデターにより、アウン・サン・スー・チー国家顧問が国軍に拘束され、文民政府関係者の拘束も相次ぎました。国家の民主主義体制が極めて大きな困難に直面しているのです。昨年11月の総選挙で、ミャンマー与党・国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割を超す議席を獲得し、軍人枠が4分の1を占める国会での単独過半数を制したため、軍部が危機感を抱いたことが引き金となりました。議席を大きく減らした国軍系の最大野党・連邦団結発展党(USDP)と国軍は、選挙に不正があったと結果に異議を唱えていました。2月1日は、総選挙後初の国会が始まる予定だったことから、国軍が暴走したとみられています。さらに国軍は、クーデターに抗議するデモ隊に対し、治安部隊によって弾圧を加え、全土で数百人が拘束されました。一方で、ミャンマーの国連大使は、2月26日、国連総会の会合でクーデターを起こした軍を強く非難し、必要なすべての措置をとるよう国際社会に訴えました。ミャンマーの政府当局者が、国軍を非難するのは異例で、抗議運動に警戒する国軍は27日に大使を「職権乱用者」として解任しました。さらに国軍が設置した意思決定機関「国家統治評議会」が、スー・チー氏が就いていた国家顧問の役職を廃止したことも明らかになっています。ミャンマーの国家体制は混迷を極め、民主主義は崩壊寸前といえます。
 
◆混乱に満ちたミャンマー現代史
ミャンマーの現代史は、混乱に満ちていました。イギリス植民地からの独立、繰り返される軍事クーデター、軍政下での民主化運動。2007年には反政府デモを取材していた日本人ジャーナリストの長井健司さんが国軍兵士によって射殺されました。さらに少数民族との紛争や弾圧も国際社会から厳しく非難されています。クーデターで実権を取り戻した国軍に対し、ついにデモ参加者が数十万人に達する日も出てきました。2007年の民主化運動で投獄された僧侶たちも、今、再び街頭で抗議の声を上げているといいます。今回の特集では、ミャンマーが直面する苦悩の実態をみつめる3作品をお届けします。

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