特集「難民の行方」(全3本)

◆戦後最大規模にまで増え続けている難民
難民とは、政治的な迫害や人権侵害、戦争、紛争から逃れて他国に渡った人々のこと。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報告によると、支援対象となる難民の総数は、2020年末時点で2640万人と、この10年で約2倍に増え、戦後最大規模といわれています。難民の出身国ではシリアが最多の670万人を占めています。アフガニスタン(260万人)やミャンマー(110万人)を含めると、世界の難民の約半数がアジアに集中しているのです。また、国外に避難することができない国内避難民の数は、シリアでは難民とほぼ同数の673万人。アフガニスタンやミャンマーでも戦闘激化や政情不安から国内避難民も増えています。
 
◆キャンプで暮らせる難民はごく一部
難民のほとんどが着の身着のまま、財産も持たないままで故郷を脱出します。無事に難民キャンプにたどり着くことができても、審査によって「難民」として認められなければ、難民キャンプで生活を始められません。避難先はインフラが整っていない途上国であることが多く、食事や水の安定供給、衛生面や教育面などに問題を抱えるキャンプも少なくありません。一方で、難民キャンプ外の都市部で暮らす難民が多いのも実情です。国際協力機構(JICA)の報告書によると、トルコ国内では難民キャンプ外で生活している難民は95%。大多数は日雇いの仕事などで生計を立てながら貧困ライン以下の生活を送っています。
 
◆受け入れる国の姿勢に課題
難民の大半が逃れて行く先は近隣の国です。トルコは隣国のシリア難民を370万人受け入れた、世界最大の難民受け入れ国。2020年、トルコがシリア難民に対して国境を開放すると、難民は一斉にギリシャ、ブルガリアの国境に向かいました。両国政府は国境検問所を封鎖するとともに、警察や軍を派遣し難民の流入を阻止。シリア難民の問題を「深刻な人道危機」と認めながらも関与を避けるEU各国の姿勢が浮き彫りになりました。 アフガン難民の多くを受け入れてきたイランでは、アフガン人に対する差別や、イラン人と同等の市民権を与えないなどの不利益が存在。親世代がイランに避難した後に生まれた若い世代のアフガニスタン帰還や、帰還後の就業に関する情報も不足しています。

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