特集「親父の肖像」(全3本)

◆映像に収められた、さまざまな“親父像”
私たちがこの世に生を受けるとき、必ず存在するのが両親です。どんな境遇の人でも、父と母がいることで、今ここに存在しています。親子関係を語るとき、母親の陰に隠れてしまいがちですが、父親もまた私たちの尊いルーツであることは疑いようもありません。旧来の父親は、稼ぎ手や監督者、性役割モデルなどの役割があるとされてきました。しかし現代では、社会性や知的能力といった、子どもの精神にも大きな影響を与えていることが分かってきました。幼児期は遊び相手として、成長するにつれてしつけ役や相談相手など、子どもの年代によって役割の変化が大きいのも父親の特徴といえます。ドキュメンタリー作家が、カメラを通して描くさまざまな“親父像”をご覧下さい。
 
◆無限の権力者は、批判の対象に
文化や宗教が違っても、多くの民族の歴史に存在したのが家父長制です。古代から中世の西欧においても、父親が家父長としての権力を行使し、家族を統率支配する制度がありました。家族は家父長に服従することが求められ、家父長は無制限かつ恣意的な権力者でした。家父長の権力は、一家全てに及ぶものでしたが、後に子孫に対して、妻に対して、奴隷に対して、と分化しました。日本の「家」における家長も同様です。現代では、家父長制は女性を抑圧しつづける権力構造であり、性差別を生み、助長してきたものとして批判されており、こうした状況を打破し変革する運動がフェミニズムと言われています。
 
◆老いとともに訪れる、主役を譲るとき
強権的な父親は、一方で子どもにとっては超えなければならない「壁」でもありました。とりわけ芸術や工芸などの“職人”の世界では、父親が師であることも多く、父に習い、父の背中に学び、父を追い越すことが、成長の証とされてきました。血縁以上の強い絆で結ばれた父子関係は、プロフェッショナルである所以。芸術家や職人が自らの世界を切り開くとき、最も身近なモデルであり、最も偉大な存在が父親であることは珍しくありません。自らを超えて行った子を見守る父親の心に宿るのは、寂しさか、喜びか。人生の主役から伴走者、そして見守る立場に。老いゆく父と家族の胸に去来する複雑な思いを感じてください。

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