特集「シリアを忘れない」(全7本)
◆内戦の復興もままならない中での甚大被害
5万人以上が犠牲となったトルコ・シリア大地震。シリアの北西部でも甚大な被害がでており、シリアでの犠牲者は5千人を超えています。内戦の復興もままならない中での大きな被害は、シリアの人々を一層苦しめています。特集「シリアを忘れない」では、日本では忘れられがちな、シリア内戦に関するドキュメンタリー映画9作品をお届けし、あらためてシリア内戦がどのようなものであったかを振り返ります。
◆シリア内戦は終わっていない
日本では、すでにシリア内戦は終わったと誤解をする人もいるぐらい、シリアに関する報道は見かけなくなりました。確かに、犠牲者の数は減少しているものの、内戦が終結しているわけではありません。2022年のシリア内戦における死者数は4千人に近いと推定されています。現在、シリア国内における暴力行為は沈静化しているものの、一触即発の地域が国内に点在し、破綻した経済などの影響により、今後も予測不能な事態が引き起こされる危険があるといわれています。
◆三つ巴の戦いが混乱に拍車
シリアの内戦は、アサド政権に弾圧されていたスンニ派の人々が「アラブの春」に呼応し、独裁政権の民主化を訴える市民運動を起こしたことが始まりでした。最初は民主化を求めるデモ運動が、それを鎮圧する政府軍と武装蜂起した反政府軍の戦いに発展し、自由シリア軍を結成したことで、紛争は決定的なものとなりました。自由シリア軍はやがて内部でも意見がわかれて分裂し、反体制派が周辺国からも入り乱れて過激派にとって代わられることで双方の対立が激化。アサド政権政府軍、反体制派、さらにIS(イスラム国)という三つ巴の戦いが混乱に拍車をかけたのです。
◆SNSなどを駆使した情報戦
またシリア内戦は、メディアを駆使した情報戦も特徴のひとつでした。SNSが反体制派の大きな力になったのです。西側メディアは、SNSで現地情勢を世界へ発信する反体制派と連携し、市民の被害者、犠牲者、特に子どもや女性たちの姿をセンセーショナルに報道することで、「巨悪・アサド政権に対する自由を求める民衆の蜂起」という構図を打ち出そうとしました。しかし、欧米が支援する反体制派では、民主化とは正反対であるイスラム原理主義の過激派勢力が力を持ち、次第にその矛盾が露呈していくことになりました。
◆今世紀最大の人道危機
宗教的、政治的な思惑が絡み合い、情勢により紛争の構図も変化してきたシリア内戦は、シリアを舞台にそれぞれ別の思惑で自らの権益を拡大・死守しようとする周辺諸国の「代理戦争」と化し、混乱が深まったことを私たちは忘れてはいけません。また、内戦は、犠牲者だけでなく多くの難民を生み、今世紀最大の人道危機とも言われました。ぜひ、ドキュメンタリー映画を通じてシリア内戦について理解を深め、一刻も早いシリアの救援・復興とより良い社会のために、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
日本赤十字社「2023年トルコ・シリア地震救援金」
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