特集「トルコで生きる」(全3本)

◆大震災の犠牲を乗り越えるために
2023年2月6日にトルコ南東部で発生した大地震で、トルコとシリアの犠牲者が5万人を超えました。この地震で倒壊した建物は16万棟を超えるとされ、その原因のひとつが、急速に都市化が進んだトルコで、建築業者に規制を遵守させなかった政府の対応や長年横行してきた汚職だといわれています。総選挙が近づくトルコでは、20年間続いたエルドアン政権に対する批判の声が高まっており、政権の継続が危ぶまれています。トルコがこの甚大な被害を乗り越えていくには、何よりトルコ社会が抱えている格差や分断を克服していく必要があります。
 
◆保守的なトルコ社会に声をあげる女性たち
トルコは、イスラム社会で唯一、NATO(北大西洋条約機構)に加盟し、EU(欧州連合)への加盟も模索しています。国民のほとんどがイスラム教徒でありながら、これまで積極的に西欧の価値観や文化を受け入れ、急速な発展をもたらしました。一方で、急速な発展は、都市と地方の格差を広げました。地方の若者たちが故郷を離れ、雇用機会を求めて都市部へ移住したのです。また、長らく保守的な価値観によって支配されてきたトルコ社会では、女性に対する抑圧や暴力が後を絶たず、これまであらゆる面で女性が不平等な立場に置かれてきました。近年、ソーシャルメディアの発展を通じて、理不尽な社会に対して声を上げる女性が増えてきたことも注目されています。
 
◆トルコ社会は、クルド人・シリア人とどう向き合うべきか
さらに、トルコの人口の約15%~20%を占めるにもかかわらず、何十年も抑圧されてきたクルド人と、トルコ政府がどのように向き合うかもあらためて問われています。あくまで暴力を用いてでも排除するのか。それとも、クルド人の文化的・政治的権利を認め、共存を模索する道を選ぶのか。また、シリアからの移民についてもトルコ社会に大きな問題をもたらしています。トルコ人の多くは、シリア人がトルコ人の仕事を奪っていると考え、社会の対立を引き起こしていると否定的にとらえる傾向が強まっているというのです。社会的マイノリティが不利益を被るような生活状況を改善しなければならないと、トルコは国際社会から強く求められています。   ぜひ、ドキュメンタリー映画を通じてトルコ社会の抱える問題を知り、一刻も早い救援・復興とより良い社会のために、皆様のご支援をよろしくお願いいたします。
 
日本赤十字社「2023年トルコ・シリア地震救援金」

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