制限なし

【タウンリポート】マレーシア「大丈夫だよ」の奥深さ

《ASIAN TOWN REPORT vol.7》

アジアの街角を現地の生活者の視点でウォッチしてみるアジアン・タウン・リポート。私たち日本人がまだまだ知らない現地ならではの常識や流行、社会や経済・文化にまつわる話題を気ままに報告してもらいます。今回は、マレーシアの価値観についてご紹介します。 

 

 

 

価値観の違い マレーシアNever mind精神 

「ごめんね」と言った時には「いいよ、大丈夫だよ」と言われると安心します。英語では“I’m sorry.”に対して、必ず何か返します。返事がないと、本気で怒らせてしまった、どうしようと不安にさせてしまうからです。“No problem.” “No worries.” “ It’s okay!” “Never mind.”などと返事をします。実はマレーシア人はこの “Never mind”をいろいろな場面で使います。価値観の違いがよく表れていておもしろいなぁと思います。あくまでも私の観察でマレーシア人がみんなそうだ、ということではないことをご了承ください。 

“I’m sorry.”に対して使われる “Never mind.” は「気にしなくていいよ、大丈夫だよ」というニュアンスがあり、相手を安心させる言葉です。それに対して、自分に対して使うこともあります。例えば、何か失敗してしまった時「あ〜やっちゃった」となっても、結構すぐに “Never mind.” と切り替えます。「ま、いっか」といったニュアンスです。諦めが早いというか、立ち直りが早いです。そういう場面を何度も目にして、そこには彼らの柔軟性が表れているということに気が付きました。くよくよ悩んでいても仕方ないんだから、他の解決策を考えよう、という前向きな姿勢です。私はやってしまったことを結構引きずってしまいますが、彼らといると気持ちをパッと切り替えることができて、ストレスが少なくなる感じがします。人の失敗を責めることもあまりしません。そして柔軟に計画を変更し、解決策を考え出す能力に長けています。 

ある時家のトイレが、水漏れがひどくなり、業者を呼びました。きちんと約束の日の内に来てくれたことは嬉しかったのですが、トイレでゴソゴソと作業を終えて、そそくさと帰ろうとしました。主人が「ちょっと待って。水漏れ直ってないよ。さっきよりひどいよね?」と言うとちらりと振り返って一言。 “Never mind!” 「バケツに水ためて使えば別にいいんじゃない?じゃ帰る!」いやいや、「それなら直せる人をきちんと呼んで直してくれないと困る」と食い下がると、「もう一個のトイレ使いなよ(マレーシアの家はトイレが2つある)」と言い残して、本当に帰ってしまいました。初めよりさらに壊して帰っていくという信じられない事態に。残念ながら修理する技術は持ち合わせていなかったようですが、解決策を2つも提示してくれました(笑)もちろんお金は払いませんでしたが、こんなことが今までに何度もありました。腹を立てても、こっちが損なだけなので、「あ〜やっちゃったかぁ」と笑い飛ばせるようになれば一人前だそうです。私はまだまだです。 
 

のんびり、おおらか、心を鎮める言葉

ある時、レストランで鶏肉を漢方で煮込んだスープを注文しました。私は漢方のスープが大好きなので楽しみに待っていると、出てきました、全くの別物が。店員さんに、「頼んだ物と違うよ」というと、「Never mind.器が違うだけだから気にせず食べて」と言われテンションが下がりました。Never mind、本当に便利な言葉です。それ以上のクレームは受け付けません、という牽制すら感じます。 

 


友だちが私の持ち物を壊したことがありました。「あ〜壊した」と言うと “Never mind.” 壊れやすいものだったんだね、と。おいおい、と思いましたが、愛嬌があるNever mindだったので許しました(笑)一歩前進です。ちなみに壊れたこのキーホルダーを買った時の話ですが、お店の売り物のクオリティーの低さにかなり笑いました。(ちなみに私が購入したのは左から2つ目のクマです。)あまりに出来が悪いので店員さんに「これ、目がないよ」と言うと「Never mind.いいやつ選びな」と言われました。だからあれが壊れたのは、本当に友達の責任ではありません。マレーシア のNever mind精神のせいです。 

 


彼らの “Never mind”の使い方を観察して、沖縄に行った時のことを思い出しました。旅中、タクシーの運転手やおばあさん、店員さんたちがいたる所で「なんくるないさ〜」と言っていました。私はその響きが好きで、人を笑顔にするあの考え方は素敵だなと思っていました。マレーシアも基本人はのんびりしていておおらかで、それと似た空気があります。そう思えば、なんだか受け入れやすくなりました。人の気持ちを鎮めて安心させる言葉だと思うようにしています。そして私も人に対して上手に “Never mind” を使えるようになりたいと思います。でもNever mind、焦らずゆっくりやっていこうと思います。

 
 
執筆者ダミー画像
こじままさみ 
クアラルンプール在住。 三重県出身でマレーシアに来て2年になります。日本ではあり得ないことが当たり前のこととして起きるので、初めはショックを受けてばかりでしたが、最近は多少のことなら話のネタに笑いとばせるようになってきました。マレーシアのゆるーい空気を愛情たっぷりにお伝えしたいと思います
公開日: 2018年09月15日 00:00