妄想!アジアンドキュメンタリーズ ジャーニー

観てから行くか。行ってから観るか。アジア各地を舞台にしたアジアンドキュメンタリーズの傑作の数々。ドラマチックな大自然や悠久の時代に受け継ぐ文化や思想。そして現代を生きる私たちに投げかけられるさまざまな問題や課題。話題作の舞台をダイナミックに五感で追随する。訪れた気分を盛り上げる妄想ジャーニーへ、ようこそ。

<秘境をぶっ飛ばせ!編>

ベテラントラックドライバーが進むのはインド北部の街チャンディガールの穀物市場からヒマラヤ山脈にへばりつくように位置するカザ村。およそ520キロ、所要およそ14時間となっている。



【DAY1】
羽田(HND)~デリー(DEL)
※所要:約9時間10分
 
デリー(DEL)~チャンディガール(IXC)
※所要:約1時間

日本をはじめ世界へのゲートウェイであるデリー「インディラ・ガンディー国際空港」に到着。ここからインド北部パンジャブ州およびハリヤーナー州の州都を兼任するチャンディガールへ国内線で移動する。国内線乗り継ぎターミナルはエアラインによって異なるので時間に余裕を。列車やバスで行くこともできる。所要時間は約4時間半~。
チャンディガール空港に到着。映画の中でベテラン、トラックドライバーのラケシュさんが荷物を積み込むのは街の中心にある穀物市場。空港からはタクシーで30分ほど。インドでは基本、乗車料金は交渉制。ぼったくりにはご用心。



市場に行く前にぜひ、チャンディガール自体を探索してほしい。実はチャンディガールはアート&建築好き垂涎の都市だ。1947年のインド・パキスタン分離独立の際、首都として都市設計がなされた場所。そして、それを託されたのが建築界の巨匠ル・コルビュジエだった。チャンディガールは都市そのものがコルビジュエの作品であり、彼が手掛けた建築物も多数現存。なかでもキャピタル・コンプレックスには議事堂や高等裁判所、「開かれた手」と呼ばれるモニュメントなどコルビジュエの傑作が現存。2016年には東京・上野の国立西洋美術館なども含めた「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」のひとつとしてユネスコ世界文化遺産に登録されている。ほかにもコルビジュエの右腕だった建築家ジャンヌレ、英国モダニズムのマックスウェル・フライによる建物も必見。
 
初日は見どころたっぷりのチャンディガールに宿泊。ジャンヌレが設計したホテル・マウントビューなどがある。

【DAY2】
穀物市場へ(0:10:24)。まさに映画に登場するようにここは人々の胃袋を支える巨大なマーケット。映画ではここからトラックはカザを目指すが、私たちはまず長距離バスを予約しないことには何も始まらない。映画のような庶民の足、ミニバスといきたいがオンラインで予約できるのはコーチクラスと呼ばれる大型バスを中心としたツーリストタイプのバス。HRTC(Himachal Road Transport Corporation)は州管轄のオフィシャルな公共交通システム。調べてみるとヒマーチャル・プラデーシュ州都シムラーまでのバスとシムラーからカザへのバスを乗り継いでいけるようだ。ざっと4時間の乗車時間。シムラーは標高2000m。季節によっては涼しいどころか寒い。中途半端な時間に到着することもあるので事前にホテルを予約したほうがいいだろう。



【DAY3】
シムラーはイギリス統治時代インド帝国の夏の首都だった。高地の涼しさに加え、カラフルな家々やコロニアルな雰囲気にインド国内有数の避暑地として人気がある。鉄道ファンには鉄道そのものが世界遺産というカルカー=シムラー鉄道の発着地としても知られる。
シムラーからは映画のルートをトレースしよう。カザへはレコン・ピオを経由する南ルートとマナリを経由して向かう北ルートがある。北ルートは冬期、道路が閉鎖される。南ルートは基本的に一年中、通行可能だが雨期になると土砂崩れで通行止めになることも多く、北まわり同様に厳しい積雪の場合は通行止めになることもあるという。どちらをとっても険しいルートであることは間違いない。映画では通年走行可能な南ルートを選んでいるようだ。HRTCのサイトをチェックすると以下のようなバスが運行していた。
 
・シムラー/レコン・ピオ 所要約9時間20分
 
レコン・ピオからカザまでのスケジュールはHRTCのサイトでは出てこなかった。実際に旅をした人の個人サイトには1日2便、カザ行きのバスがあると出ている(2022年現在)。所要は約9時間。
この南ルートのカザ行き(0:12:58)のバスは途中、タボといった村々を経由する。停車ごとに人々が乗り降りしては、バスは渓谷にへばりついた悪路を進む。寝ることさえもできないほど激烈に揺られながら、綱渡りな崖っぷち走行を体感することになる。



一方、マナリ経由の北ルートはHRTCの料金検索によるとシムラーからマナリまでのバスが見つかった。所要時間は約8~11時間と示されている。マナリからカザまではよりローカルなミニバスなどを利用するようだ。料金はバスによって微妙に違うようで、高くふっかけられることもあれば何故か安くなっている場合もあったりするのがインドの不思議。地元の暮らしとはあきらかに異なるわけなので値切ることに貴重な時間やおだやかな心を失うのはもったいない。あきらかに法外な料金でなければツーリストとして提示された料金を快く受け入れたい。

ここで用心したい。北ルートも南ルートも所要時間は願望をこめた時間であるということだ。落石(0:14:32)など予想できないロードコンディション(0:18:11)、いきなり吹雪もザラじゃない気象環境、バスの故障などなど。時間通りに着くなんて思うのが甘い。中国との国境近くということもあり途中でパスポートチェックや許可証を取得する必要などもある。無事にカザに到着するだけでラッキーと思いたい。



しかし、そんな苦労を一気に吹っ飛ばすのが車窓からの絶景だ(0:51:05)。透明感ある粒子の光の中、クリアに見渡す雄大な峰々、雲ひとつない青空。パノラミックな景観は高揚感をおぼえ見飽きることがない。眼下には乳白色にきらめくスピティ川やサトレジ川。高く白いヒマラヤの峰々と、えぐるように流れる深い渓谷が織りなす荒々しくも美しい風景は息を呑むほどにすばらしい。ときおり過ぎる村や黄金色のゴンパ、風を受けてカラフルにはためくタルチョなど、そこに人の暮らしがあることにも思いは向かう。


カザへの途中、世界中のバックパッカーやフォトグラファーが憧れるのがスピティ渓谷だ。インドと西チベットの国境地帯に位置し10~11世紀には仏教王国であるグゲ王国が栄えた場所。仏教寺院や仏教美術が点在するロマンあふれるエリアだ。映画に登場するキー・ゴンパ(0:39:03)はその象徴的存在。また、カザから東南へ50キロほど。スピティ川沿いのタボ村は菩薩像や立体の曼荼羅が圧巻のタボ・チョスコル・ゴンパ(ゴンパとは僧院)で有名。カザを基点に周辺に点在する寺院や村を訪れてみたい。
 
カザに着くのが翌日か、あるいはもっと後か。それは神様のみが知ること。映画の登場人物たちが祈りを唱えながら悪路を進むのは、その先に自分を待つ家族や誰かがいるからだ。たった一本の道が人生をつなぐ。たどり着いた先でどんな出会いが待っているか。そこに自分だけの物語があるはずだ。


※スケジュールは旅行サイト、料金検索サイトなどを活用して調べています。また、季節、COVID-19後 、休業、料金、条件などが変わっている可能性があります。あくまでも妄想としてお楽しみください。※データは調査時点でのものとなります。

妄想!アジアンドキュメンタリーズ ジャーニー 「秘境をぶっ飛ばせ!」編

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