ヒンドゥー教聖地バラナシで輪廻からの解脱を望む人々を追うドキュメンタリー作品『バラナシ死のホテル』

今回のドキュメンタリー映画紹介は、インドの聖地バラナシ(ワーラーナシー)にある解脱の家「ムクティバーヴァン」や滞在ホテルを舞台にしたドキュメンタリー映画『バラナシ死のホテル』です。これらの施設は、輪廻からの解脱のため「死を待つ人々」が最期の時を過ごすための特別な場所であり、ヒンドゥー教の宗教的価値観に基づいて運営されています。本作は、ガンジス川沿いの巡礼地として知られるバラナシでの独特な死生観や、モークシャ(解脱)を求める人々の姿を記録した貴重な映像作品です。それでは作品紹介をさせていただきます。
<作品紹介>
ドキュメンタリー作品タイトル:バラナシ 死のホテル
~インドの神聖都市バラナシは沐浴と祈り、火葬で解脱に至る聖地!ヒンドゥー教の輪廻と死生観に迫る衝撃のドキュメンタリー映画~
原題 | BY THE RIVER |
制作年/作品時間 | 2020年製作/作品時間25分 |
撮影地 | インド |
製作国 | オーストラリア |
監督 | ダン・ブラガ・ウルベスタッド |
インドで最も神聖な都市とされるバラナシ(ヴァーラーナシー・ワーラーナシー)。ヒンドゥー教の信者にとって、この町で死にガンジス川で火葬されることは、輪廻からの解脱を意味する。町には解脱を望む人が死を待つためのホテルや解脱の家(ムクティ・バーヴァン)が複数ある。自殺は教義に反するため、人生の終焉を迎える滞在が40年にも及ぶ客もいる。死を待つ滞在者、遺体を焼く火葬業の男、1万人以上の死者を見送ったホテルの管理者、それぞれが死と向き合って暮らしている。ヒンドゥー教の宗教観や家族観を通して、生きることと死ぬことの意味について掘り下げるドキュメンタリー。聖地でカメラが捉えたものは、単なる儀式ではなく、信者たちの生き方そのものだ。
[ドキュメンタリー作品・予告編]

本ドキュメンタリー映画の見どころをお伝えする前に、ヒンドゥー教や神聖都市バラナシ、ヒンドゥー教における輪廻転生と解脱に関して簡単ではありますが、ご説明いたします。
<解説!ヒンドゥー教の信者数と特徴>
■ヒンドゥー教の信者数■
ヒンドゥー教は、インドを中心に広く信仰されている宗教で、ヒンドゥー教の信者数は約11億人以上とされ、世界で3番目に多い宗教です。インドでは人口の80%を占める8億人以上が信者とされており、ネパール、バングラデシュ、スリランカ、インドネシアなどにも信者おり、移民によりアメリカやヨーロッパにも広がりを見せています。

■ヒンドゥー教の特徴や他の宗教との違い■
ヒンドゥー教の特徴は、神の数が多く、多神教的要素と哲学的な思想が融合している点や、特定の創始者や教典が一つに定まっていない点、生まれ変わりの思想が強調される点も他宗教とは異なります。
・ヒンドゥー教は多神教であり、代表的な神にはブラフマー(創造神)、ヴィシュヌ(維持神)、シヴァ(破壊神)などがいます。これらの神々はそれぞれ異なる役割を持ち、信者の間で崇拝されています。
・ヒンドゥー教は、仏教やキリスト教、イスラム教と比べて教義が統一されておらず、柔軟で多様な信仰形態を認めている点が特徴です。
・ヒンドゥー教では、瞑想やヨーガ、プージャ(礼拝)などの宗教的実践が日常的に行われます。また、インド社会に深く根付いたカースト制度もヒンドゥー教と関わりがあり、社会的役割や生まれの違いを宗教的に正当化する要素を持ちます。
・「カルマ(業)」と「サンサーラ(輪廻)」の思想も重要で、行いによって次の生が決まるという考え方が根底にあります。
<解説!神聖都市バラナシと解脱の場所>

バラナシ(Varanasi:ヴァーラーナシー・ワーラーナシー)は、インドのウッタル・プラデーシュ州に位置するヒンドゥー教の最も重要な聖地の一つです。別名カーシー、ベナレスとも言われるバラナシは約3000年以上の歴史を持つ都市であり、ヒンドゥー教徒にとって解脱(モークシャ)を得るための特別な場所とされています。バラナシのあるガンジス川のほとりには無数の寺院や火葬場があり、多くの巡礼者が訪れます。
■「解脱の家」と火葬場■
死を待つホテルや解脱の家「ムクティ・バーヴァン」では、ヒンドゥー教徒が最期の時を迎えるための特別な宿泊施設として機能しています。例えば、余命がわずかと診断されたヒンドゥー教徒等が集まり、死を迎えるための準備を行います。彼らは祈りを捧げながら、死後の解脱を願います。本作では、死にゆく人々とその家族、そして施設を管理する僧侶たちの姿が、ありのままに映し出されます。
また、死を迎えた後、バラナシの火葬場「マニカルニカ・ガート」では、毎日多くの遺体が荼毘に付され、魂の解脱を願う宗教儀式が執り行われています。


<解説!ヒンドゥー教の輪廻転生と解脱(モークシャ)>
■輪廻転生の考え方■
ヒンドゥー教では、生死を繰り返す輪廻の概念が根付いています。人は死後、新たな肉体を得て再び生まれ変わるとされ、前世の行い(カルマ)が次の人生に影響を与えると考えられています。
■解脱(モークシャ)とは?■
ヒンドゥー教において、最終的な目標は輪廻の輪から解放されること、すなわちモークシャを達成することです。バラナシで亡くなることは、モークシャへの最短の道とされており、死を迎えた魂は輪廻転生を終え、神と一体化すると信じられています。
<『信仰のつながり』ドキュメンタリー作品の見どころ>
・ヒンドゥー教の死生観に迫る
ヒンドゥー教において、死は終わりではなく新たな輪廻の始まりとされており、特にバラナシで亡くなることは、輪廻の輪から解き放たれる「モークシャ」に繋がると信じられています。本作では、聖地バラナシにある死を待つホテルや解脱の家ムクティ・バーヴァンに集まる人々の姿を通じて、ヒンドゥー教の宗教的慣習や死生観が浮かび上がります。
・宗教ドキュメンタリーとしての価値
「バラナシ死のホテル」は、ヒンドゥー教の宗教儀式がどのように行われるのか、巡礼地としての役割、そしてバラナシ ガンジス川沿いの文化や風習を知ることができます。宗教ドキュメンタリーの中でも特に貴重な作品です。
・人間の生と死を見つめる
本作は単なる宗教的なドキュメンタリーにとどまらず、「生きるとは何か」「死をどのように迎えるか」といった普遍的なテーマにも迫ります。バラナシで死を待つ人々の穏やかな表情や、家族の祈りに心を打たれることでしょう。

■『バラナシ死のホテル』はこんな方におすすめ!■
「バラナシ 死のホテル」は、バラナシの聖地としての役割や、ヒンドゥー教の死生観を深く掘り下げた貴重な作品です。バラナシにある火葬場やガンジス川沿いで繰り広げられる宗教的慣習、死を迎える人々の姿を通じて、生と死について改めて考えさせられます。ドキュメンタリー作品としての価値も高く、宗教や文化に関心のある方にとって見逃せない一作です。
ヒンドゥー教の宗教的価値観や死生観を学びたい方、インド文化やドキュメンタリーに興味がある方、宗教のドキュメンタリーを好む方、生と死について深く考えたい方には、特におすすめです!


◇関連ドキュメンタリーご紹介
ヒンドゥー教の作品では、今回ご紹介した『バラナシ 死のホテル』以外にも、世界最大の宗教行事・ヒンドゥー教の祭典「クンブメーラ」に迫るドキュメンタリー映画『信仰のつながり』も公開されています。こちらも是非ご覧になって下さい。
[サイトURL:https://asiandocs.co.jp/contents/273]
【コラム】おすすめ!必見作品『バラナシ 死のホテル』
アジアンドキュメンタリーズの配信作品の中から、今、特に注目されている人気の話題作をピックアップしてご紹介させていただきます。
ドキュメンタリー作品ページはこちらからご視聴下さい。
『バラナシ 死のホテル』 https://asiandocs.co.jp/contents/197
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